えー仮にですね、観ていて恥ずかしい映画、ダサい映画とは何か、という事を考えたときに、現在最もそれにあてはまるのがどんな映画かというと、個人的には「バブル期に作られた日本映画」ではないかと思われるわけです。
…まあ80年代リバイバルがすっかり一般化した今、ファッション的にもっとも痛くダサい事になっているのが90年代初頭のあの頃でして、そういう意味でもケツが割れるほど恥ずかしい訳ですが、それ以上に「目を覚ませ!死ぬぞ!」と往復ビンタをかましたくなるのがあの当時の世間の浮かれっぷり。地べた這いずるような景気の今から考えると目が潰れるような狂った金銭感覚。ゴッホの絵を50億で買っただとか、夜の繁華街で一晩に300万使っただとか、売れ残った5万のスーツの値札を50万にしたらアッという間に売り切れただとか、今考えるととても正気の沙汰ではないんですがキットみんな仲良く狂ってたんでしょうね。
で、ちょっと前に黒沢清の『地獄の警備員』というのを観たんですが、舞台となるのがとある商社で、主人公たちが億単位の金をバッカバッカ突っ込んで絵を買い漁るバブリーな方々。このせいか映画の内容とは関係なく「このバカチンが!」「エエエこのバカチンが!」とわたくしの中の黒い部分が連呼するのにはたいへんビックリしました。
いま就職難に喘いでいる学生さんなど、『就職戦線異常なし』なんて観た日にゃ口からアワ吐いて憤死確実とみた。あとこのころは『稲村ジェーン』『家族輪舞曲』『天と地と』などなど存在自体がバブルそのものの映画もあったなあ。わたくしは当時バブルのバの字にすら関わりのない貧乏学生でしたが、社会人になった今、バブルのツケを見えない形で少しずつ払わされている感じは確実にあり、その腑の落ちなさにまた私の中の黒い部分が「バカチンめ!」と毒づくのでした。
(2001年11月16日)