アンダーワールド

えーヴァンパイア(吸血鬼)とライカンスロープ(狼男)が黒いレザーと黒いロングコートに身をつつんでスタイリッシュにお火器類その他をぶっぱなしまくるという割にはほとんど話題になっていない映画『アンダーワールド』を観てきました。上記のような設定に加えてヨーロッパの貴族みたいなヴァンパイアにマッドマックスみたいなライカン、舞台は暗く重苦しい真夜中の都市(とその地下)、そしてほのかなロミオとジュリエット成分という、世のゴスっ娘メグちゃんが集団失禁の果てに遠くから救急車がピポピポ迫ってくるようなお好きな方には堪らない一本。ゴスっ気はほとんどと言っていいほど無いわたくしですがそれでもあのポスターにおけるケイト・ベッキンセールのたたずまいには丹田の下の方が訳もなくソワソワするカッコよさを感じます。素晴らしい。という訳で以下感想。


感想1)
ヴァンパイアとライカンスロープの全面戦争、というか仁義なき戦いという設定の映画はこれまでありそうでなかったですな。しかも舞台は現代。ということは火器類も現代のそれでライカンがフルオートの銃を二丁づかいでビスビス撃つわバンパイアが手榴弾をポイするわで、物語は吸血鬼と狼男という古典的なモンスターを題材にとりながらも、これまでにはない新しいストーリーとシーンを紡ぎ出してゆきます。いやあ新鮮だ。古い革袋に新しい酒を盛った好例と言えるでしょう。


感想2)
酒はあたらしくて美味しいのう。では肴はどうよ。ということで絵的に『マトリックス』の向こうを張るかと思われるアクションシーンですが、ちょっと待て。なんかピリッとしないな。雰囲気も美術も雰囲気バツグンですし、火器も血糊もたっぷし。おまけにバンパイアとライカン双方の超人っぷりがあちらこちらで満開にもかかわらず、このケレン味のなさはどうだ。ものすごくカッコいいシーンでなくてはいけないはずなのに、なんとなく漂うフツー感。切れ味の悪さ。トドがつまるところアクションが全体的に猛烈な平凡っぷりを発揮しており、必然的に盛り上がりは仲間由紀恵の乳のような貧しさにさいなまれます。


感想3)
しかし雰囲気はたいへんよろしい。美術関係と衣装関係が特に。あと主役のケイト・ベッキンセールが華奢で可憐なたたずまいにもかかわらず劇中ニコともしないドスの利き方でナイスでした。その他の皆様はえー、なんだ、その、スマン、知らないひとばっかりだったんですが、特にヴァンパイア側の大親分を多分にクリストファー・リー風味で演じたビル・マイと、主人公のトゥシューズに画鋲を入れるような役どころのソフィア・マイルズがよかったですな。


感想4)
しかし、それにしても個々のパーツが魅力大にもかかわらず、アクション部分をはじめとする全体の至らなさ感はいかにも惜しい。この内容で『マトリックス』並…とはいかなくても、せめて『ブレイド』並のケレン味があれば世のゴス野郎どもが血走った眼でオカワリ三杯するような逸品に化けたのではないでしょうか。どう考えても続編作る気マンマンな終わり方ゆえ、次回作ではその辺のパワーアップを切にお願いしたいと思います。なむー。


(2003年12月08日)
アンダーワールド
Underworld
2003年 アメリカ
監督:レン・ワイズマン
出演:ケイト・ベッキンセール スコット・スピードマン シェーン・ブローリー