スリープレス

わたくしが愛してやまないダリオ・アルジェント先生の新作『スリープレス』観てきました。いやーこうして先生の新作を劇場で拝めることができようとは…と涙でゆがむ視界。ここ最近の作品はビデオスルーばっかりだったからなあ…。もう齢60を超えたジジさまでありますが、がんばって新作をスパンスパン撮って頂きたいものです。


で、肝心の内容。例によってお得意の血まみれホラー映画であります。13年の歳月を隔てて、ふたたび巻き起こる連続殺人事件!被害者のかたわらには動物の形の切り絵が!というわけで、13年前の事件を担当した元刑事(マックス・フォン・シドー)が、被害者の息子とともに事件の捜査にのりだす…というミステリー風味。しかしそこはそれアルジェント先生ですので、辻褄とか合理性とか必然性は有って無きがごとし。話の展開もミラクルなほどに強引で観客はケムにまかれてゴホゴホ、と思えば肝心の犯人は中盤でスコーンと透けてしまい萎えッ!と、期待を裏切らない見事なアルジェント節ですが、ファンとしては複雑な心境です。


元刑事のジジイと母の敵討ちに燃える若者のタッグが事件の謎に迫るわけですが、昔の事件の詳細を憶えているはずのこのジジイがいいかげんモーロクしており、硬直した脳細胞でがんばって昔の事件を思い出そうとしますが、何せトシなので重要なことがどうしてもムニャムニャ。はっきり言ってこのジジイが昔の記憶をスパーンと一発で思い出すだけで上映時間が半分に縮まるような気がしますが、演じているのが今にも心臓が止まりそうなマックス・フォン・シドーなのであまりヒドい事いうのも気が引けます。


とまあストーリーは泥酔したタコのようにグデグデですが、しかし殺人シーンの凝り方は相変わらずの冴え。金管楽器で顔面をブスブス刺し散らかしたり、死体のツメを肉ごと切り落としたり、切断された首が断末魔のマバタキをしていたり、とイヤなシーンが満載。アルジェント健在。齢60を超えても枯れない変態描写には感動です。


特筆すべきは音楽で、アルジェント先生の代表作で音楽を担当していたゴブリンが久々に復活。一発で「アルジェントだ!ゴブリンだ!」と判るナイスな音楽をつけておられます。この音楽のおかげで、久しぶりにアルジェントの新作を観た!という満足感に浸れましたね。アルジェントの代表作のあの独特のムードは、実はゴブリンの音楽に依るとこが非常に大きかったのだなあ、と思った次第であります。


(2002年08月10日)
スリープレス
Non Ho Sonno
2001年 イタリア
監督:ダリオ・アルジェント
出演:マックス・フォン・シドー ステファノ・ディオニジ