これは刑事モノの隠れた傑作ですねえ。バート・レイノルズ扮するところの刑事シャーキーは仕事中に市民を撃ってしまい風紀課に左遷されます。ブツブツ言いながら売女の皆様を留置所に御案内する日々のシャーキーですが、ある娼婦の殺人事件をきっかけに政治絡みの事件に巻き込まれていくというお話。
ハードボイルド物としても結構な雰囲気なのですが、それ以上に登場人物たちの心情がきめ細かく描かれてて引き付けられますねえ。ともすれば、ストーリーのバランスやスピード感をも殺しかねないほど、作り手がキャラクターに感情移入しているのがアリアリと観てとれます。監督は主演のバート・レイノルズ。主演の俳優が演出にも関わると「オレがオレがオレがカッコいいからオレ最高」と果てしない自己陶酔に陥りがちなものです(晴郎のように)。この映画もその例にもれませんが、逆にそのバランスの悪さが魅力になってます。
なにせ感情移入の対象が悪役にも及んでますからね。ここで殺し屋を演じたヘンリー・シルヴァ。サイコーかつサイコな怪演です。ジョージ・レーゼンビーとカナヘビを交配したような見事な爬虫類顔。死神のような長身。このナチュラル・ボーン・悪役がヤクをキメて「アー!」と全世界の子供を泣かすであろう形相で叫びながら至近距離からショットガンをブチ放します。さらにヤク中ですので4発銃弾を食らっても死にません。かと思えば子供のように泣きじゃくりながら実の兄を射殺。中年の英語教師のような容貌の彼がベソをかいている姿には万人が引きますが、そこに作り手が感情移入しているのが手に取るように判るので非常に忘れ難いシーンになりました。
(2000年08月13日)