そしてカッコ良く捨て台詞をはいて立ち去るドレビン警部ですが、振り向きざまに扉にぶつかって「オウッ」というステキにベタなボケをかましてくれて、開始から5分にしてこの映画のアホさ加減が伺えます。見事な仕事です。
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この苦み走ったオヤジがボケの限りを尽くす
右はプリシラ・プレスリー
開巻早々にしてこのノリですから、以後も大量のギャグ(ストーリーに直接関係無い場合多し)がテンコ盛りでサービス満点。下手をすれば「ドリフ大爆笑」並みにベタなギャグが、大量に、スクリーンで、しかもクソ真面目に進行していくという事実がまたおかしさに拍車を掛けます。モンティ・パイソンのように知的ではなく、アメリカン・ジョークのように機知に富んでもいない、そこにあるのはただひたすらにアホらしさという、コメディ映画の一つの極北と言えましょう。なんせ道路に倒れた人間の上を突然(全く何の脈絡もなく)ローラー車が通りすぎていって、のしイカみたいなぺらぺらの死体ができあがるという『トムとジェリー』のようなギャグを堂々と映像化してるんですから、なんと言いましょうか、アホの確信犯ですね。スバラです。
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イカす
撮ったのはデビッド・ズッカー、ジム・エイブラハム、ジェリー・ズッカーの三人組、いわゆるZAZですが、彼等の『トップ・シークレット』という作品も全編にアホが咲き乱れており、傑作となっております。これ、実はヴァル・キルマーのデビュー作なんですね。ヴァル的には間違いなく無かったことになっているでしょう。余談ですが、『ゴースト/ニューヨークの幻』を観に行って、監督の名がジェリー・ズッカーだったのを発見したときは椅子からずり落ちそうになりましたが、映画が思いのほか感動的だったのにはさらに驚きましたね。その後『裸の銃を持つ男21/2』で思いっきり『ゴースト』のセルフパロディをやってたのにはかなり笑わさせて頂きました。
(1997年)