ローレライ

えー話題の『ローレライ』観てきました。といっても今年のゆうばり映画祭にて。いやあ去年のラインナップが塩をかぶったナメクジのような覇気の無さだったので内心危うしゆうばり!と心配の虫がキコキコしていたのですが、今年はその反省をふまえてかラインナップ、ゲストともに異様に豪華なので「もしやこれはロウソクの最後のひと燃えなのでは…」と逆に心配の虫がキコキコしたりしなかったり。


まあそれはそれとしてお題の『ローレライ』です。東京に落ちる第三の原爆を阻止すべく、終戦間際に日本を出発した最新鋭潜水艦。それに搭載された画期的な戦略兵器「ローレライシステム」の正体とは…。という話でいわゆる男くっさい潜水艦もの。艦長が役所広司に部下が柳葉敏郎、船医が國村隼、鬼軍曹にピエール瀧(!)という、まあこれらの男臭たちこめるメンツが狭い艦内にひしめき合って男フェロモン垂れまくりのお好きな方必見映画なのであろう、まあ唯一どう見ても特攻隊崩れには見えない妻夫木聡の存在が気になるがのう…と見始めましたが、この映画、なんと開始30分を待たずして潜水艦映画の不文律をあえて堂々と破ってきた!つまりドキッ!男だらけの潜水艦内に男でない方が混じっていたという現実的にはまずあり得ない展開なのですが、これをアリと観るかナシと観るかでこの映画に対す評価は分かれる事でしょう。つまりアリとした方はこの映画を一種のファンタジーとしてみる事が出来た方で、ナシとした方はそのファンタジー部分と現実の太平洋戦争の融合に納得がいかなかった方であろうと。


わたくしはまあ「アリ」のほうですが、作り手も言っているようにこれは我々の世代がガンダムとかヤマトといったフィクションの中の戦争を多く見て育って来たからなんでしょうね。こういうファンタジックな物語と、実際にあった戦争が同じ映画の中で描かれる事に抵抗が無い。(まあだからと言ってフィクションと現実を等価視している訳では当然なく、まあファンタジーなんだなこれはよ、と歴史の教科書的視点からは切り離して観てるのですが)


という訳でけっこうノッて観てしまい節々でグッと来ましたね。日本人は踏まれても踏まれても立ち上がるんですよ何度でも!オトナが責任を放棄してどうするんだあんた!というような現代の観客にダイレクトに向けたメッセージが良かったです。日本の戦争映画は、これまでは戦争反対!戦争は悲惨だ!戦争は愚かだ!という反省のもとに成り立っているモノがほとんどで、それはそれで正しいんだけどそれしか言わないのもどうなんだ。とつねづね思っていたので。


あと役所広司がやっぱり良いです。頼れる大人の男を、少々くたびれた感じも出しつつ、サムライでもマッチョでもない方向で演じられる人はなかなかいないと思います。



(2005年03月13日)
ローレライ
2005年 日本
監督:樋口真嗣
出演:役所広司 妻夫木聡 柳葉敏郎 香椎由宇