ジェヴォーダンの獣

『ジェヴォーダンの獣』。中世のフランスの片田舎で起こる謎の獣による連続殺人!その謎の解明に派遣された博物学者とその従者…という、ああ『スリーピー・ホロウ』に続く洋風金田一モノか、きっとケモノは人間が殺人を偽装するための隠れミノでホントは村の公爵の夫人あたりが犯人だろ。とわたくしの頭の中で事前にシナリオが組み上がり余裕をこいておりましたところ、映画の中盤でいきなりビンビンと元気に動くケモノ君がお出になられて大ビックリ。そしてそれを迎え撃つ博物学者と従者が二人して反則のように強い。なんなんだ一体。


というわけで内容は金田一モノとは程遠く、モンスター+ガンファイト+チャンバラ+クンフー+ホラー+コスプレ+歴史+グロ+お色気、というマクドナルドのメニューを右端から順番に頼んだようなB級フルコース。沈鬱な中世土俗ミステリーという先入観はどこへやら、香港風アクションにハリウッド風クリーチャー、中世のコスチュームに喋りはフランス語、そして好き放題に暴れまくるインディアンの戦士と画面に繰り広げられるのはもはや無国籍の極みでギャホーゥです。ここまでB級魂が炸裂したフランス映画というのも珍しい。いろいろ作りは荒っぽいとこもありますが、イキオイと情熱で突っ走った快作でしたよ。


特筆すべきは、インディアンの従者を演じたマーク・ダカスコス。シャープなアクションと凛としたマスクでスゲー魅力大。人気が盛り上がるとみた。残念なことに後半で退場してしまいますが、それまでヘナチョコ系のキャラと思われていた兄貴分の博物学者が怒りで豹変して千葉真一みたいになってしまうのが「トミーとマツ」みたいで愉快でした。


余談ですが、獣が跋扈して人を殺しまくったというこの事件は史実とのことで、パンフには研究家が解説を寄せていましたが、映画の濃さにドギモを抜かれたのか「私の思い描いていた獣はどこに行ってしまったのだろう…という思いは消えない」と微妙な表現で文を締めくくっていました。


(2002年02月04日)
ジェヴォーダンの獣
Le Pacte Des Loups
2001年 フランス
監督:クリストフ・ガンズ
出演:サミュエル・ル・ビアン ヴァンサン・カッセル モニカ・ベルッチ