↓えー『カンフーハッスル』ですが以下ネタバレているので未見の方はご注意なすってください。
というわけで最終日の最終回で観て参りました。しかしずいぶんゆるい邦題じゃねえかよう…と思ってたら原題でしたよこれ。全般的にたいへん面白く観ましたが、今回なぜか主人公のはずのチャウ・シンチーの影がうすい。まあ主人公なので最後は尻に爆竹でも詰めたかのような大活躍なわけですが、そこに至るまでのプロセスにちょっと疑問符がつくというか、最後の主人公の秘めたパワー大爆発に至るまでのネジの巻き方がどうも十分ではなく、助走不足のままいきなりスーパーサイヤ人のように強くなってしまうのでどうにもいなめない唐突さ。画面上で繰り広げられる未曾有の大バカアクションをウヒヒと堪能しつつも心の隅にわだかまる「いいのかコレ?」という感情。というわけで観終わったあとも喉の奥には言いようのないムズムズが。
むしろ今回おすすめしたいのは、脇を固める役者たち。冒頭は単なる気の弱いスラムの住人だったり、逆に暴君のような強欲大家だったり、昼間っから酒を喰らってセクハラ三昧のダメ親父だったりで、なんだよこいつら…とマジ引き寸前のダメっぷりが炸裂。見た目もスダレ頭にヨレヨレのおっちゃんシャツだったりするのでダメ度は道ぱたの野壷のごとしですが、度重なるギャングの仕打ちに耐えかねて隠していた拳法の腕前を解放したとたん、何だこれは!まるで別人のようなカッコ良さが炸裂します。しかも強い。やっぱり人間見た目じゃねえ!実力だ!敵役もふくめ、この脇役が鬼神のようにように暴れ回るシーンが凄くいい。アクションも最高。燃えます。(コレオグラファーはあのユエン・ウーピンとサモ・ハン・キンポー…納得)
この「普段ダメダメ」→「でもホントは達人」という能ある鷹は爪隠す感が痛快さを生み出している分、最後に半ばタナボタ式で強くなってしまった主人公はどうしても分が悪い感じです。(まあ、もともと凄い素質を秘めていた…ということではあるんですが)
役者はどれもいい味出してますが、特にゴウツク大家夫婦(実は物凄い拳法の達人)を演じたユン・チウとユン・ワーがたいへんよろしい。さらにユン・チウのほうは実は元ボンドガールだそうでアラびっくり。あと、敵役となるギャング団のボスを演じたチャン・クオックワン。実は『少林サッカー』でブルース・リー似のGK「神の手」を演じた人なんですが、この人化けましたね。『少林サッカー』時の近所のあんちゃん風味から実に見事な変身っぷり。いい役者さんになってます。やるなあ。
まあ一つ大きな不満はあるものの、それ以外はやたらと面白い70年代カンフー映画の正嫡。アメリカ資本が入った結果ちょっとチャウ・シンチーの毒気成分が薄まった感じはあるものの、とにかく面白いので観とけ!とその辺をブラついている坊主頭の中学生男子に強くお勧めしたい傑作であります。
(2005年02月11日)