子連れ狼、といっても萬屋錦之助ではなく富山若三郎、じゃなかった若山富三郎。大五郎の方もつい最近実生活でお金を貸してくれた人を暗殺してリアル瞑府魔道に突入してしまった人ではなく別人です。このふたりが
「大五郎」
「チャン」
と重厚な演技をまき散らしながら乳母車を押し押し歩き回る毎度のストーリー。ある意味ロードムービーですなあ。
映画版の第1作目なので、なにゆえ二人が充実の瞑府魔道ライフを送る羽目になったのか、といういきさつが描かれてます。子連れ狼こと拝一刀はもともと幕府の公儀介錯人で、割腹した人の首をうしろからバッサリしてあげるのがお仕事でした。オープニングからして5才くらいの幼児に切腹(の真似)させて首をスッパリですから驚きのプロ根性です。
そんな彼も柳生一族の陰謀により濡れ衣を着せられ、切腹を迫られますが白装束でブチ切れて大五郎を抱えたまま大暴れ。逃げおおせて御家再興をたくらみつつアサシン稼業で積み立て貯金に励みます。
全編なにかというとチャンバラが始まりますが、首や手はダイコンでも斬るみたいにドサドサ落ちますし、血しぶきに至っては水芸のようにピルルル飛びますので残酷度はハラショーです。乳母車にも色々武器が仕込んであって、あっちから斬馬刀がポン、こっちから小柄がスラリとボンドカーからの影響は明白ですが、なにも子連れ狼まで影響されることはないでしょう。
時代劇と言えば斬っても派手な音がするだけで血は一滴も出ない、というイメージがありますが、この映画はそのイメージをとにかく真正面から否定してますねえ。日本刀が人体を一瞬で両断する紛れも無い凶器である、ということをアリアリと実感させてくれます。とはいえ切り落とされた足が揃えた長靴みたいに行儀よく立ってたりするのは明らかにヤリ過ぎですが。
最後は湯治場に巣くう荒くれ者どもを全員退治、その場を肉屋のバトルロイヤルみたいにして去り行く彼等は「大五郎」「チャン」と再び瞑府魔道ライフを満喫するのでした。
ちなみに、赤ん坊の大五郎の前に刀と鞠をおいて、刀を取れば生かし、鞠を取れば即殺す、という有名なシーンが出てきます。もちろん大五郎は刀をとって命拾いしますが、畳に突き立てた抜き身の刀にハイハイで体ごとぶつかってゆくので別な意味でハラハラしました。
(2000年07月22日)