キル・ビル vol.1

つわけで『キル・ビル vol.1』観てきました。


感想1)
タランティーノの個人的趣味が炸裂。これまでの過去の監督作品では、彼おとくいのオマージュや引用が装飾や味付け程度に映画にまぶされている、という感じでしたが、今回はそんなチマチマしたことなんかやんねーぜドカッといけドカッと!という訳で映画のほとんどの部分を引用とオマージュだけで作ってしまったというサンプリング純度の高い仕上がりになっております。つか、タラが余りにも俺趣味を炸裂させた結果、引用という手段自体が目的そのものにすり変わってしまってる感も大いにアリで、それを楽しめるか、または許せるかで評価は大きく変わってくると思われます。


感想2)
引用をゲハハと笑って楽しむのがこの映画のいちばんオイシイところ。じゃ引用以外の部分はどうなんだ、というとこれがちょっと微妙。タラが初めて挑んだというアクションシーンは、まだちょっと初々しいというかギコチナイというか、なんだかまだうまく捌けてない感じ。このヨチヨチ感はちょうどティム・バートンやブライアン・シンガーがアクションを初めて撮った時の感じによく似てます。ストーリーに関してはまだ前編部分なので評価保留。ただ相変わらず語り口はタラ節で時系列バラバラでした。


感想3)
この映画のいちばんオイシイところと言える引用について。まず最初に言っておくと、音楽のセンスは素晴らしい!冒頭のナンシー・シナトラや青葉屋のシーンの布袋寅泰、病院のシーンの口笛や果たし合いのシーンのマカロニ・ウェスタン風BGMなど、音楽がものすごく印象深いシーンがテンコ盛り。極め付けはエンドロールに流れる梶芽衣子の「恨み節」フルコーラス!いやあこれは凄い。ハリウッド映画のエンドロールにコテコテのド演歌、しかも合いの手に泣きのガットギターが入るような奴が堂々と流れているという一種の異常事態ですが、これがまたえらくカッコいい。その他、『柳生一族の陰謀』や『修羅雪姫』からのBGMの借用もアリ。あと憎い敵たちが初登場するたびに「ちゃっちゃらっちゃらっちゃー」と『鬼警部アイアンサイド』(つか、我々としてはどっちかと言うと「ウイークエンダー」ですな)のジングルが律儀に流れるのは笑いました。


感想4)
その他の引用について。もう元ネタが何か、何に対するオマージュなのか、というのを列挙してゆくと果てしない事態になるのでここでは端折ります。タラのB級映画へのすさまじい偏愛っぷりにはもはや「あがおがおご」とアゴをはずしてうめく他はありません。ただ、サンプリングのセンスが良いのは認めつつも、あなたそれだけでこの先やっていける自信がおありになって?と思わずセイラさん口調で心配してしまいますが…。


感想5)
ルーシー・リュー最高!いやーチャリエンの1作目の頃はこの台詞を発する日が来ようとは夢にも思いませんでしたが、もう一度言う。ルーシー・リュー最高!和服姿の立ち居振る舞い。青葉屋での登場シーン。雪上の決闘での見栄の切り方。以上めっさカッコの良いことになっています。死に方以外は。あとユマ・サーマンですが痩せたなあんた。『パルプ・フィクション』のときのモチっ子ぶりはどこへ行った。個人的には昔の方が好みなんだがゴホンゴホン。い、いやそれはいいのですが、ヒロインとしてはまだキャラがいまひとつ立ち切っていない感じです。まあこのへんは『vol.2』に期待しましょう。


感想6)
一部で話題の珍妙な日本語台詞について。いやたしかに「んぷっ」と鼻から仁丹が飛び出しそうになる瞬間もなくはないですが、基本的にものすごく頑張っている部類だとおもいますんで、そこをあげつらって笑うのは野暮ってもんでしょう。


感想7)
ソニー千葉こと千葉真一、そして宇宙刑事ギャバンこと大葉健二の共演シーンにはタラの熱いリスペクトが感じられて感動すると同時に、豪快にスベるギャグの掛け合いに手に汗を握る、という劇中でも最も油断ならないシーンとなっていました。


感想8)
誰か、誰かはやく栗山千明を止めてあげて!


感想9)
なんかミラマックスがあの手この手でアカデミー賞を狙ってるみたいですが、この映画は内容も立ち位置もその手の映画の正反対にあるものなので、権威ある賞をあげたりすると逆に失礼にあたるんじゃないか、という気もしますよ。


…とまあいろいろ書きましたが、基本的には面白く観ましたことです。あと血の量がハンパでないのでその手のが苦手な方は要注意。


(2003年11月06日)
キル・ビル vol.1
Kill Bill: vol.1
2003年 アメリカ
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン ルーシー・リュー 千葉真一