『インソムニア』観てきました。『メメント』で史上初の「逆回転ムービー」を作ったクリストファー・ノーランの最新作です。最新作、と言ってもこれはリメイクでして、97年の同名のノルウェー映画がオリジナルであります。女子高校生殺人犯を追う過程で、過って同僚を射殺してしまう刑事。うわっヤベ、ヤッベーと狼狽した刑事は出来心でその同僚を犯人が射殺したことにしてしまいます。このウソがバレそうになるとそれを糊塗するためさらにウソを重ね、いいかげんもう後戻りができなくなったところで真犯人から「オトモダチになろうよー」と電話が来て事態はさらに収拾不能に。追い詰められた刑事はアラスカの白夜と精神的ストレスで長い不眠に陥るのであった。という神経磨耗型サスペンス。では以下感想。
感想1)
まず、とても面白かったですね。展開がほとんど読めないので、次どうなるんだコレ。次!といったサスペンス映画の最もプリミティブな面白みを堪能できます。ただしこの映画のサスペンスはちょっと変わってて、刑事(アル・パチーノ)の刑事がウソの上にウソを重ねてその上にまたウソを。という具合で、今にも崩れそうなトランプの塔を積んでいるのを横から眺めているようなドキドキ感。しかもついているウソが同僚の死因に証拠の偽造、果ては無実の人をタイホという素晴らしくシャレで済まないシロモノだけに、ウソが一個トッピングされるたびに「一体この話どうやって結末をつける気だ?」と興味をそそられます。
感想2)
精神的ストレスと白夜のせいで不眠に陥るアル・パチーノ。劇中一週間近く一睡もせず、話が進むにつれて心身ともにヨレヨレになってゆく感じを実に良く演じてます。演出の方も、徹夜明けによくある「お脳に膜が一枚かかった感じ」をうまく醸し出しててナイス。徹マン明けとか本当にこんな感じなんだよなあ。頭の中がなんだか高野豆腐みたいになっちゃって、ギュッと絞ると睡眠汁がボタボタと垂れてきそうな感じ。
感想3)
世界3大いい人役者のひとり、ロビン・ウィリアムズが悪役を演じたのも話題です。小心かつ狡猾な犯人をものすごーく地味に演じておりますが、あまりに地味すぎるのでこれは計算なのかそれとも華がないのか微妙な感じです。
感想4)
やっぱり人間正直が大事!というわけで、ウソをつき通さなくてはならないときの、あのなんとも言えない居心地の悪さをこの映画はとても上手く描いていると思います。あ、あと冒頭のアラスカの氷河の美しさは大変ナイス。ちょっと行ってみたいなコレは、と思いました。24時間日が沈まない、という体験をぜひ一度してみたいもんです。逆の24時間日が昇らないっちゅーのも同様。
(2002年09月17日)