伊賀忍法帖

えーとちょっと前に行きつけの散髪屋さんで「バジリスク」という山田風太郎原作の漫画を読んだんですが、これが面白かった。というか内容の破天荒さにガビーンとなって以後私の中で風太郎は「すごい人」箱に分類される人となったのであります。内容は伊賀と甲賀の忍術合戦だったわけですが、その忍術が体毛を自由にあやつるだとか毛穴から血を吸うだとか、甚だしいのになると死んでも生き返るだとか、忍者って一体なんだ。


まあそんなわけでこの映画『伊賀忍法帖』です。「バジリスク」の原作は「甲賀忍法帖」でしたがこっちは伊賀。忍法帖と言い切るだけあって風太郎風味のキテレツ忍法が炸裂しています。基本的には謎の忍法をあやつる怪僧5人(ストロング小林、風祭ゆき、福本清三、佐藤蛾次郎、浜田晃)と真田広之の壮絶な戦いを軸に、エロあり、グロあり、ロマンスあり、陰謀あり、乱心する殿様あり、中尾彬と千葉真一の濃厚顔面対決ありの大盛りだくさん丼ですが、その割には食後の満足感が今ひとつと言うか、いっこいっこの要素がかなり大味なので正直物足りなさは否めません。


ただし見所はいろいろあって、佐藤蛾次郎の忍法が黄色いゲロ噴射だったりとか、『ラストサムライ』で無口なサムライとして有名になった福本清三が意外に喋りまくってたりとか、ストロング小林の忍法がなかなか正体を見せないので何かな何かなと楽しみにしてたら単なる「怪力」だったとか、お好きな方はイヒヒと楽しめる要素が各所に満載。その他、中尾彬が助平な殿様を水を得た魚のように演じていたりとか、顔を隠して真田広之を助ける千葉真一が目だけ出していても一発で千葉真一だと判ってしまうところなどは全国の濃い顔マニア必見。極めつけは果心居士を演じた成田三樹夫で、これはもう怪演としか言いようのない大怪演。三樹夫ファンはマストの一本です。


まあそういう濃いい面子が入り乱れて陰謀だの策略だのが飛び交うお話になるわけですが、油断して見てると最後はいつのまにか真田広之と渡辺典子のラブロマンスに漂着。二人抱き合って死んだんだか生きてんだか不明のままエンドクレジットが始まり全ての観客を置き去りにして終わるという、まさに忍者が煙幕ドカンで周囲を煙に巻いて逃走するがごときラストだったので流石は忍術映画!といたく感動した次第です。


最後に一つだけ。美術と特撮は非常に頑張ってると思います。中盤の東大寺炎上のシーンはかなりの迫力でした。


(2006年03月21日)
伊賀忍法帖
1982年 日本
監督:斎藤光正
出演:真田広之 渡辺典子 中尾彬 成田三樹夫 千葉真一