例の『D.O.A』の衝撃がいまだ冷めやらず、あのラストシーンを思い出してはこみ上がる笑いを噛み殺す毎日のわたくしですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
哀川翔ってええ役者さんじゃのう、とこの映画で初めて気付かされたのと、『CURE』が面白かった黒沢清の、その後の仕事だというので『修羅の極道 蛇の道』というのを借りて観ました。ハク付けに短期間劇場公開された作品なのかも知れませんが、まあいわゆるVシネマ、主にビデオでの鑑賞を念頭においたものであることは、出ている役者の地味さ加減からも察しがつきます。
これがとても面白かった。Vシネというと、やたらビビッドな色のスーツを来た人が白目をむいて関西弁で叫びながら拳銃様をぶち放したり、微妙に賞味期限を過ぎた女優さんが体当たり演技とか言いながらビビッドスーツの人に全裸で襲いかかったりというパブリックイメージがありますが、この映画にそんな要素は詰めた小指の先ほども存在しません。
なにせ主演の哀川翔の職業が塾の先生ですからね。この先生が、娘を殺された男の復讐をなぜか手助けするという話で、全編これ梅雨時の床下のような陰湿な復讐劇。語り口はあくまで突き放した寒々しいタッチ。銃撃シーンもいわゆる撃ち合いは殆どなく、逃げる男を背中から撃ったり、倒れた相手に向かって執拗に発砲しまくるような後味ネトネトの代物。このうすら寒い雰囲気が大変よろしい。このへん『CURE』に大いにつながるものアリです。
これまで世にでたVシネのほとんどはさっき書いたようなパブリックイメージ通りのものだと思うんですけど、中にはこういう異色作も混じってて、しかも非常に作家性が発揮されているというのはちょっと意外でした。食わず嫌いはいかんなあ。なんでも食べてみないと。
(2000年02月25日)