ハウルの動く城

えーというわけで微妙に今更感が漂いますが『ハウルの動く城』を観てきました。事前のネタバレを執拗に避けてはいたのですが、目をつぶっても耳をふさいでも情報というのは忍び込んでくるわけで、なんとなく漏れ伝わってくる悪評に宮崎ファンとしては心配の虫がソワソワ。映画が始まってからもそのあたりの不安感を常に意識しながら観てしまったりして以下感想。


感想1)
あちこちで言われていたようですが、ストーリーのグダグダさ、キャラ描写のフォーカスの甘さなどは確かに弁護のしようがない状態で、過去の宮崎駿作品からすれば愕然とするような舌足らずさ、あるいは強引さ。なんだかこれまともに作ったら3時間はありそうな脚本をバリバリと2時間に刈り込んで、跡に天花粉も何もはたかず刈りっぱなしで放置したよな荒っぽさを感じます。とにかくひたすらに「今何が起こっているか」を描写するのみで、それを裏打ちするバックグラウンドが全くすっ飛ばされているというのは凄い。一体どうしたんだ駿。やっつけ仕事なのか駿。それとも好き放題やった結果がこれなのか駿。結末なんかまるでジャンプの10週打ち切り漫画のようだよ駿。前作と前々作で言いたい事とやりたい事を出し尽くしてしまったのでしょうか。あやうし駿!


感想2)
…と書くとかの宮崎駿も終わったかのような気になってしまいますが…しかし。もう一度言う。しかし!これが何でかえらいこと面白いんですよ。ちょっとこれは異常なことです。あそこまで物語が瓦解しかかっているにもかかわらず、最後までほぼ全く退屈せずに観られる、むしろ積極的に面白いと感じながら観させられてしまうというのは一体どういうことなんでしょうか?連なりとしては分解しちゃってるけど、一つ一つのシーンを取れば瞠目せざるを得ない絵作りに動き。はしばしに込められた可愛げとユーモア。こうしたミクロな面白さが全編につまっております。おかげでほとんど退屈することがない。こういうのを底力って言うんでしょうかね?


感想3)
ネット上では前評判が散々、というか物凄い悪意をもって語られていたハウル=木村拓哉のキャスティングですが、これはまったく問題なし。つかハマってました。見栄っ張りでカッコつけでキザ、というハウルのキャラを考えれば、これは客寄せでもなんでもなく必然性があってのキャスティング。倍賞千恵子も、19歳状態のソフィーにはさすがに最初抵抗がありましたが、終盤には全く気にならなくなっていました。これは貫禄か?演技力か?その両方でしょう。


感想4)
全体的に説明不足な物語の中、(以下ちょっとネタバレなので空白部分をドラッグしてお読み下さい)「ソフィーにかけられた呪いの正体と、それが結末にどうなったのか」という点においても全く説明がなされていないわけでますますビックリなわけですが、これは台詞で明言していないだけでちょっと考えれば正解に思い至る描写が各所にあります。もしかすると駿としては、もう柔らかくて甘くておいしいだけの映画を出す気は無いのかもしれません。手がかりだけは暗喩として物語に仕込んで、あとはお前ら自分の頭で噛み砕いて観ろよと。『千と千尋の神隠し』が、大ヒットしてあれだけの人が観たにも関わらず、「売られた娘が源氏名もらって風俗で働く話」という駿本人の意図がほとんどメディアで語られる事はなかったというところで駿自身も「ダメだこりゃ」と思ったのかもしれません。おまえらもうちょっと深読みしないとダメだよ!と駿が観客に売って来たケンカじゃないかと言う気もします。まあ「本気出してこの結果かよ…」と思いたくない駿ファンの苦しい言い逃れに聞こえなくもないですがまあいいや。ちょっと『もののけ姫』を観直してみたくなりましたよ。


(2005年01月30日)
ハウルの動く城
HOWL'S MOVING CASTLE
2004年 日本
監督:宮崎駿
出演:木村拓哉 倍賞千恵子 美輪明宏