みんな大好き『悪魔のいけにえ』を撮ったトビー・フーパーの第二作がコレですね。どこかの片田舎のホテルの主人が、宿泊客をかたっぱしから殺して池のワニに食わせて御満悦と言う話です。これも『いけにえ』同様、アメリカで起きた実際の事件を題材にしているのかどうか、そんなことはオレの知ったことかボケ!という感じでヒャホホーですが、映画を見れば別に実話でもフィクションでもどうでもいいやと思わせるある種のヤサグレ感が濃厚に漂っており、夢も希望も無い内容と、余りに呆気無く思いやりのない結末も相まって、ちょっと自己嫌悪に陥ってる時に観たりした日にゃ「じゃあちょっとそのガス管くわえてみようか」と早まったり先立ったりしそうになるので要注意です。
主人公の殺人鬼じじいをはじめ、出てくる登場人物が揃いも揃ってある種の苛立ちに取り憑かれてるのが観て取れますが、一体何にイライラしているのか今一つ判らない。…どうもこれは具体的に何かイライラの対象がある訳ではなく、強いて言えば何かその時代の気分みたいなものを反映してるんじゃないか、という気がします。ホラーとしてはちっとも怖くないうえに、ワニが出てくるといっても口だけのハリボテをスタッフが画面外から棒でヒコヒコ動かしているようなシロモノなので映画としての面白さはミジンコ級ですが、この息苦しさ、やりきれなさのお陰で妙に印象に残る映画になりました。
まあなんつってもじじい役のネヴィル・ブランドですよ。この役のために生まれてきたような絶妙のクタビレ顔!ひと昔前のエロ劇画に出てくるようなモテないオッサンがそのまま実写化されたかのようです。濃厚な70年代顔。あと『悪魔のいけにえ』につづいてマリリン・バーンズが出演してますが、前作同様「キャー」「ギャー」「モゴー」が台詞の大部分を占めるうえに話の後半はパンティ姿で右往左往の熱演ですから気の毒度が2ランクアップです。あとスケコマシのバカ兄ちゃんが異様にショーン・ペンに似てたので気になってましたが、エンドクレジットを見てたら実はロバート・イングランドだったので驚きました。エルム街のフレディがこんなとこで下積みを積んでたとは…。意外にいいカラダしてましたよ。
(2000年10月15日)