えー『バレット・モンク』とどっち観るか迷ったあげく『着信アリ』観てきました。しかしどんな二択だ。
実は全く期待せずに観ました。監督が三池崇史とはいえ「自分の携帯に自分自身の番号から着信が入り、留守電に自分の断末魔の声が録音され、そして自分は必ず死ぬ」というそこらの都市伝説をツギハギして作ったようなワンアイディア映画っぽかったのと、昨今商売としてオイシイ心霊実話テイスト映画の尻馬に乗っかった感じが強かったのと、TVブロスあたりで後ろ向きな感じの評を読んだような記憶があるのと、なにより原作が秋本康だぁ?なめんなよ!ペッペッ(ツバをまき散らす音)という感じで、まあ邦画ホラーファンとしては一応押さえとかなきゃという義務感というか使命感のみで鑑賞にのぞんだわけですね。
ですが、これが真っ当に面白かった。ほとんど期待してなかったせいもありますが、ちゃんと怖く、ちゃんと面白く、ちゃんとハラハラするという非常にウェルメイドなホラーに仕上がっていました。そして観賞後に残るどんよりとした重苦しい気分。なにせ裏テーマが昨今悪い意味で世間をにぎわしているあの問題であるゆえ、どうしてもいたたまれない感が炸裂してしまうわけですが、そのへんのヤーな感じも含めて強力なホラーとなっていましたよ。
特筆しておきたいのはストーリー運びの面白さ。たんなるワンアイディア映画ではなく、そのワンアイディアから次々と枝葉が伸びて観客の興をつないでゆきます。「携帯に死のメッセージが来るんだったら、電源切っちゃえ」「解約しちゃえ」という観客の至極当然な心のツッコミにも丁寧にフォローを入れ、しかもその過程がサスペンスとしてチャンと成り立っているあたり、ニクい。ひいてはその呪いのメッセージの根幹を突き止めるあたりのミスディレクションとサスペンスもたいへんナイスです。
しかしアレだ、この映画が最近の日本のホラー映画と一線を画すのは、オバケとか幽霊とか腐乱死体とかを画面上にアカラサマに見せてくるにもかかわらずコワいということ。個々数年の邦画ホラーの方法論は、恐怖の対象を決して画面上にクッキリと描かないことで恐怖を盛り上げる、というモノでしたが、この映画は、霊にしろ霊のパワーにしろ、まるでハリウッド映画のようにあからさまに力強く直球で描いております。ハリウッド映画の場合はそれがマイナスに作用して、なにか遊園地のアトラクションを観ているような「安全なところから観ているコワいもの」という粘らない納豆のような味わいになっちゃってますが、こっちはちゃんとコワいよ。これまでの邦画ホラーの流れから一歩踏み出したうえで、しかもキチンとコワくて面白いものを出してきたことは要チェックです。
あと最後。なんだか事態がハッキリしないうちに映画は終わってしまうんですが、まあそこはそれ三池崇史の作風ということでがんばって納得してください。おわり。
(2004年01月22日)