えーやっとみてきましたよ。『CASSHERN』。最近どうも映画館に行く腰が重くっていけねえ。これもそろそろ上映終了か?という微妙な時期に駆け込みっぽく観てきました。まあ上映直後から予想通りにギタギタな評判が周囲から漏れ聴こえており、こちらとしても地雷覚悟で「わー」とばかりに劇場に突進。140分をなんとか生き延びて帰ってきたわけで以下感想。
感想1)
みんな言う程ヒドくはない。いや、ヒドいのはヒドい。しかしヒドくはない。どっちなんだ!…えーつまりダメなところはもう山火事のあとのハゲ山のごとく壊滅的にダメなわけですが、その一方チカラワザとイキオイのみでそのダメ部分を乗り切ってしまったところもあり、なおかつ異常に突出してしまった部分もあって、総合的には良いも悪いもゴッタゴタになったカオス状態。確かに映画的な完成度からすれば赤ペンが何本あっても添削が終わらない赤ペン先生号泣の仕上がりですが、だからといってポンコツの一言で捨ててしまうには惜しい。惜しいのじゃよ!
感想2)
まあ何がダメかというと、まず語り口の一貫したグデグデっぷり。観客は左脳の方でなんとか「こういう展開なんだ…」とボンヤリ把握しつつも、右脳の方が細かい話の繋がりをチェックすると余りにも判らない事だらけで混乱の極み。結果としては「なんとなく話は見えつつも細部がちっともわからん」というスネークの生殺し状態におかれます。とにかく話運びの唐突さと繋がらなさはこの映画の最大の欠点と言って良く、「今のイナズマ何?」「なんでこんなところに城が?」「なんで城のなかに大量のロボットが?」と暴走するストーリーに観客は翻弄されっぱなし。しかも多くは説明を放棄したまま判ったことにされて進みます。数多くの疑問符をぶら下げたまま観客がつれてこられた果てはこの物語の黒幕判明場面ですが、結局この黒幕は何をしたかったのか?左脳的にはには分かっても右脳的には理解不能。あまりの話の繋がらなさに席を立ちながら「おれって頭わるいのか?」と真剣に悩みました。
感想3)
もう1つ。登場人物が自分の感情を執拗に台詞で説明してくれるので「いま悲しい場面なんだ」「いまつらい場面なんだ」「いま感動する場面なんだ」というのが自動的に分かってたいそう便利というか親切というか大きなお世話って感じですが、しかしこの語りがやたらと長く、なんだか便所の前で下腹部を押さえてコンコンとドアをノックしているような気分になります。ビックリしたのはキャシャーン君とルナちゃんがお互いのキモチを己のラブビジョンを通した画面で延々と語り合う場面で、そこにオーバーラップしてラブビジョンを通さない現実の会話の場面が差しはさまれるという、つまりは同じ内容のセリフをラブビジョンあり版と無し版のふた通り聞かされると言う前代未聞の念の押しよう。すげーなーこれ。こんなの観た事無いぞ。一回言えばわかるよ!あるいはそうでなくともいっこいっこの語りがめん棒で伸ばしたように長い。わたくしの連れもこの長い語りに負けてしまったらしく中盤で撃沈され意識不明に陥っていました。まあその後しばらくして目が覚めたらしいですが、寝ていた間のシーンをスッ飛ばしてもストーリーを追う上では全く問題にならなかったといいますからダッハッハです。
感想4)
とまあここまでズタボロに書いてしまいましたがしかし!なんかこう作り手の「おれはこれを伝えたいんだ!こ・れ・を・伝えたいんだアァァァァ…」という叫びのようなものは伝わってきます。それは非常に初々しいというか青臭いというかNHK青年の主張っぽい感じではあるんですが、その熱意と意気込みは決して不快なものでは無く、ラストシーンでは妙に詩情のある映像もあいまってちょっぴりジンとくるものすら。
感想5)
映像について。良く言われていることですが、140分という尺の映画を全編ここまで過剰なCG処理で加工した映画はかつてなかったということで、これはもしかしたら記録と記憶の両方に残るモノなのかも知れない。とにかくPVで良く見られるようなギラギラしたコントラスト、荒れたテクスチャといった映像が140分途切れることなく続くのはこれまでの映画の常識からみればまさに異常事態。この意味でこの映画は飛び抜けている…というよりは誰もやったことがないことをやって異端になってしまった、という感じです。まあ異端であれば手ひどい叩きに遭うのが世の常ですが、それを恐れず突っ走って作り上げたことは評価されてもいいと思います。まあ確かに目は疲れますが。
感想6)
中盤のアンドロ軍団対キャシャーンの対決場面。カッコ良すぎて思わず笑いが。つーかこの場面キャシャーン強すぎだろ!まあこのように妙にカッコいいアクションシーンもあれば、カットのひとつひとつが全く繋がっていなくて泣けるほど盛り上がらないアクションシーンもあったりします。惜しい。
感想7)
個人的には大滝秀治の顔を巨大スクリーンに映して紙吹雪バラまくという素晴らしくビザールな絵ヅラだけで何もかも許して差し上げたい気が。それはそれとして秀治ヨボヨボになってたなあ…。医者役で出演してた三橋達也も逝ってしまわれたことだし、そろそろお迎えが…ううう。
感想8)
とまあダメなところは完膚なきまでにダメだった訳ですが、その一方で作り手の思い入れが異常に込められてたり絵ヅラだけに異常なまでにこだわったりした結果、どこにも似たものが見当たらない異形の映画が生まれてしまったという気がします。このフリーキーな存在感は良くも悪くも忘れがたいものでしょう。
(2004年05月31日)