吸血鬼ブラキュラの復活

えー名前の通り吸血鬼の映画なんですが、新機軸として黒人が主人公です。ビデオのジャケットには70年代の香り漂う暴力的なモミアゲを生やした伯爵が「くわっ」とキバを剥いている図のほかに、七色のアフロに金色の目をした正体不明の人物が写っていて思わず身体が笑う体勢に入ります。よくみたらパム・グリアーが出てたりしてますねえ。相変わらず爆乳ですがアフロも爆発しています。っていうかでてくる登場人物の2人に1人はアフロなのでややもすると画面は毛だらけです。凄い時代でした。


えーと話ですがブードゥー教の跡目争いに破れた男(アフロ)が逆ギレのあげく古文書の儀式を行うと、なぜかブラキュラ先生が復活して「ちーす」って感じで玄関から入ってきます。おもむろに男(アフロ)の汗ばんだ首筋に牙を当てるブラキュラ先生!吸血鬼映画のくせに初手からこのような色気レスな場面を展開するだけあって、劇中でもパム・グリアー(アフロ)の爆乳が全く生かされていないのは大変遺憾です。


男女の区別なく首筋をカプカプして仲間の増殖に余念がないブラキュラ先生。普段は堂々とした物腰の紳士ですが吸血欲が高じてくるとマユゲとモミアゲがボカンと発達したソウルフルなお姿に変貌します。どうやら正体はアフリカの大変やんごとなき身分の方らしいですが、なんの加減か吸血鬼にカップリやられて今や吸血鬼稼業。御本人もそれを大変気に病んでおられるらしく、ブードゥーの巫女であるパム・グリアー(アフロ)に「呪いを解いてくれ」と頼みます。パム姐さん(アフロ)も「アラなんて気の毒な方なのかしら…」などと情け深いところは微塵も見せない正直な演技で眉間にシワ寄せておびえまくりです。そりゃまああんなバイオレンス溢れるモミアゲに迫られては如何に70年代と言えど引きます。


しかしそこはそれ映画ですのでパム姐さん(アフロ)も脱ドラキュラの儀式開始。腰が引けていますが。実にこの映画のクライマックスですが、画面は眉間にシワを寄せて祈るパム姐さん(アフロ)と、脂汗かいてウンウン唸るブラキュラ伯爵の顔面をワンツーパンチのようなカットバックで延々繰り返すだけですので悲しいほど盛り上がりません。そうこうしているうちにパム姐さんの彼氏(アフロ)が警官隊を引き連れてブラキュラ邸をガサ入れですが、屋敷をウラウラほっつき歩いている吸血鬼たちにしてみればカモがネギを刻みながら鍋に乗って突撃してくるようなもんですからカルカンよりもネコまっしぐらです。しかしそこはそれ、彼氏(アフロ)も必死に対策を考えてきましたが、出合いがしらに吸血鬼の胸に木の杭をブッスリ刺してみましょうという基本に忠実すぎるシロモノなのでちっとも面白くありません。やはりアフロに養分を吸い取られては御脳も応用がきかなくなるのでしょう。


かくて吸血鬼軍団とアフロ軍団の仁義なき争いが繰り広げられるなか、パム姐さん(アフロ)をブラキュラ伯爵の儀式は延々続行。そこへ彼氏(アフロ)が登場、やめなさい!と儀式を邪魔するとブチ切れたブラキュラ伯爵は吸血モードへ移行、バーサーカーと化して彼氏(アフロ)の首筋を狙います。危ない!とパム姐さん(アフロ)はいつの間にか用意していたブラキュラ人形の胸をナイフでブッスリ。「ぐわー」と叫ぶブラキュラ。さすがブードゥー教だ!ブッスリ。ぐわー。ブッスリ。ぐわー。というのを延々繰り返した挙げ句、ブラキュラ伯爵が両手を広げて苦悶しているアップの姿で唐突に映画は終わります。どうしたらいいかわたくしにもわかりません。


なお、ジャケに写っていた七色アフロのナイスガイはどこをどう探しても出てきませんでした。いい度胸だ。


(2000年12月18日)
吸血鬼ブラキュラの復活
Scream Blacula Scream
1973年 アメリカ
監督:ボブ・ケルジャン
出演:ウィリアム・マーシャル パム・グリア ドン・ミッチェル