バリスティック

えーちょっと前に観たんですが『バリスティック』。予告編では銃弾がズドドと景気良くぶち放され、おまけに火薬も大盛りドカーンドカーンというド派手アクションの趣で、しかもアントニオ・バンデラスとルーシー・リューというプロフェッショナル二人が血で血を洗う死闘死闘!というわけでかなり期待して観たんですが、なんじゃこれは!というわけで映画が終わる頃にはそこはかとない苛立ちと欲求不満が大脳新皮質に充満という、ひらたく言うところの「金返せ」という感情が嵐のように盛り上がってくるのを押さえられない大変エモーショナルな作品に仕上がっていました。


だいたいサブタイトルに「エクスvsシーバー」とあるくせに、中盤で「エクスシーバー」になってしまうとは一体どういう了見かと。こいつらがギャリギャリ火花を散らして激突しあう様がみたかったのに何だ何だ。しかもこのタッグが立ち向かう敵が偏差値で言うと40ぐらいにしか見えない連中なので、終盤の大虐殺もアリに向かってキンチョールを放つかのごとき緊張感で面白さは銀河の彼方に飛び去ってゆきます。それにそもそもアクションがゆるくて悲しい。珍しく素顔で出演しているレイ・パークとルーシー・リューが手持ちの銃器をかなぐり捨てて、素手でのファイトで決着をつけるシーンなど、普通ならどう考えても燃えざるを得ないシーンのはずなのに、肝心のアクションがペチッペチッというプリティな擬音が似合う代物なのでステキに盛り上がりません。うわあもったいねえ…かえすがえすも無念です。


いや、そうは言っても前半の銃撃戦のシーンや、カリ・スティックで警官たちをなぎ倒してゆくルーシー・リューの雄姿など、みどころはあるのです。特に殺人マシーンに徹したときのルーシー姐さんのクールさには非常にグッとくるものがあります。そもそも役者といい設定といい、超絶に燃える素材であるのは間違いがないのです。にもかかわらず料理の仕方が余りにマズくて台無しの極みという、海原雄山もヅラを逆立て激怒する手際の悪さ。いやあ期待が大きかった分ガッカリ度も大きかったですトホホ。


(2003年10月21日)
バリスティック
Ballistic: Ecks VS. Sever
2002年 アメリカ
監督:カオス
出演:アントニオ・バンデラス ルーシー・リュー