アップルシード

えーみなさま連休いかがお過ごしでしょーか。というわけで『アップルシード』観てきました。いやね、予告編観る限りでは『…』という重苦しい感想しか浮かばなかったわけですよ。だってこれパッと見ゲームのオープニングムービーみたいじゃないですか。古今ゲームのオープニングに「スゲー!」とビックリすることはあっても「オモシレー!」と感動することはまずないわけで、なおかつ脳裏によみがえるのは映画版『ファイナルファンタジー』のにがずっぱい思い出。それにわたしゃー特に原作ファンというわけでもないしのう。というわけで面白さその他は全く期待せず、主に技術的イノベーション部分の確認のみというやさぐれたスタンスで鑑賞に臨んだわけですね。


感想1)
まずはCGの出来映えから。まず、メカ主体のアクションシーンの出来は非常に素晴らしい。細部が異様なまでに作り込まれたメカの、そのメタリックな質感、重量感、スピード感。そしてそれらが織りなすド派手なドンパチ。「精密なディティールを背負ったメカが縦横無尽に動いて激しいアクションを」という点で、この作品はCGアニメの新しい可能性を切り開いた気がします。かつてここまでメカのディティールを作り込んだCGアニメはなかったし、予算さえあればまだまだ作り込めそうな余裕すら。この方向性は突き詰めてゆくと将来もの凄いことになりそうです。スゲッ!


感想2)
その反面、「まだまだなのか…」と思ってしまうのが人物のCG表現。どぎついトゥーンレンダリングを使用しているために、セル画のキャラクターがそのまま3Dになったかのような質感ですが、色彩がやたら鮮やかで妙にギラッギラしており、なんだか動いて喋るマネキンの演技を眺めているような気分になります。もちろんモーションも(顔の表情まで含めて)本物の人間からキャプチャーしているわけですが、自然さを感じさせるにはまだまだ解像度が荒い気が。このへんはまだまだ成熟の途中なんだろうなあ…。


感想3)
…というようなところとはまた別の次元で、なんでやってないのよ!と全力で突っ込みたくなるのが「汚れ」の表現。つまり、メカだろうが人だろうが、どんなに激しく戦闘をしても、どんなにホコリまみれの廃墟を這いずり回っても、テクスチャーにはキズはおろかチリひとつ付かず常時ピカピカ。途中、主人公二人が荒れ狂う海に落ちて命からがら海岸に這いずり上がるシーンですら、体には砂粒ひとつ付かずに光沢がテッカリ。というわけで余りにも不自然な清潔感のために「つくりもの感」が生まれてしまい、観客が本気で感情移入できるためのサムシングが画面上から消え去っております。そういえばこの人たち、汗すらかいてなかったような気がする。そのためか、途中で主人公が涙を流すシーンがもの凄く異質な物に見えたことでした。


感想4)
多分この「汚れ」の表現はやろうと思えば技術的には十分可能だと思うんですが、それが実現しなかったのはひとえに予算と製作期間の問題のような気がします。続編ができるらしいですけど、次はこの点を全力で改善しにかかるんじゃないだろうか。観客にエモーションを伝えるには、この不自然な清潔感はあまりもにも大きな障害でしょう。


感想5)
とはいえ、現時点では技術的にかなりの力作であることは間違いありません。クライマックスにおける●●●●の集団攻勢のシーンなどは圧巻のひとこと。燃えます。が、このようにビジュアルが突出している反面、ストーリーとかセリフとかのテキスト要素がなんとなくゆるーい扱いになっているのはどうかと。特に台詞まわりの強烈な陳腐さにはパンツの中にどじょうでも突っ込んだかのようなムズムズ感が。


感想6)
…というような問題もかかえてますが、CGアニメのとりあえずの到達点を示した要チェック作と言えます。そういえば音楽もなかなか良かった。心地よい音圧を体感できるという意味で、家庭ではなく劇場の大音量で聴いて頂きたい気持ち良さであります。オーイエー。


(2004年05月02日)
アップルシード
APPLESEED
2004年 日本
監督:荒牧伸志
出演:小林愛 小杉十郎太 松岡由貴