ええっと劇場公開時に観ていたにもかかわらずなぜか感想を書いてませんでした『WXIII PATLABOR THE MOVIE 3』。面白かったのになんでだ。思うにきっとそれどころではなかったのでしょう。今回CSで録画してたので改めて観てみましたよ。
えー劇場で見たときは面白がりつつもひたすら地味地味地味地味!という印象でしたが、今回見直してみると…やっぱり地味でした。ただ、単に地味なのではなく、繰り返し観ると味の出る渋みがあります。
刑事ドラマとして丁寧に編まれたシナリオが大変よろしい。とり・みきの起用は正直言って?マークをいくらつけても足らない判らなさがありましたが、あにはからんや、心理描写や伏線、小道具など隅々まで目の行き届いたシナリオでブラボーです。その後他の映画を手がけたという話はとんと聞きませんが、もうシナリオ仕事はやらないのでしょうか。惜しいな。
おなじみイングラムちゃんや特車二課の皆様はチロッとカメオ出演みたいな感じでしか出てこないのでディープなファンの方はさぞご不満であろうことが予想されますが、そういう方々には同時上映で『ミニパト』という逆にファンにしか面白さが分からない短編が用意されてたのでそっちでバランスを取っていただきたいということでしょうか。この『ミニパト』、劇場公開時は3つのエピソードのうちどれか1本が上映されているという見事な食玩商法で、ファンの尻毛はおろか乳毛まで抜き倒そうという商魂に当時はいたく感動した覚えがあります。
それにしてもこういう地味な映画が大作アニメとして公開されてしまうとは凄い時代になったものです。ひいては『パーフェクト・ブルー』みたいにSF色もファンタジー色も無いアニメが一般化して、そのうちアニメに縁もゆかりも無いような純文学作品がぞくぞくとアニメ化される時代になるかもしれません。『斜陽』とか。『蟹工船』とか。『蒲団』とか。一体誰が見るんだ。あと芥川龍之介の『歯車』戦慄のアニメ化!とか(←これは観たい)。そういや『火垂るの墓』みたいな例もありますな。これ、もう観る前から号泣するのが判っているので超有名作ながら未だに観る事ができませんよ。
(2005年11月23日)