マニアック2000

史上初めて血まみれの恐怖映画を作った事で名高いハーシェル・ゴードン・ルイス。この野郎の最高傑作とされている作品がこれですが、その言葉が悪質なサギとしか思えません。


南北戦争で北軍に全滅させられた南部のある村。そこの村人が蘇って北部から来た旅行者をだまくらかしては殺しているという話です。この村の人口が2000人なのでタイトルも2000。ウソではありません。ちゃんと劇中に「この村、人口2000人」という看板が頼んでもないのに出てきます。ちなみにビデオリリースの際は『2000人の狂人』という配慮の行き届かない邦題がついていましたが、しかしこれ原題直訳ですね。


旅人はバーベキューにされたり、岩の下敷きにされたり、内部にクギの飛び出した樽に詰められて坂を転がされたりと熱烈過ぎる歓迎を受けます。こうしたゴアなシーンが明るい太陽の下で健康的に行われているところが、何かこう取り返しのつかない病を感じさせます。こうしたシーンになると描写が妙にハツラツとしてくるのとはウラハラに普段のシーンは犬も退屈するツマラなさ。残虐シーンがカット割りも細かく、構図もマメに変化するのに比べ、普段のシーンは俳優の演技を真横から撮ったダケですので吉本新喜劇のようです。これってもしや残虐シーンを引き立たせるための計算では…などと心にも無いことを考えてしまうあたり、さすがスプラッタの父!とぞんざいな言葉を投げかけたくなります。


基本的に残虐シーンは群集の中で行われるのですが、出てくるエキストラ達が揃いも揃ってヨソ見し放題、「ナニナニ何やってるのコレ」という感じでヘラヘラ笑ってたりするのでサイコーです。かと思えば無惨な屍を前に沈黙、「何でオレこんな変態映画に出てんだろう」と突然素に戻るので観ているわたくしの後ろめたさは倍増します。


脚本、演出、演技、いずれも全く弁護の余地のない見事なポンコツぶりです。音楽に至っては「イーエッフゥゥ」と人間の活力を吸い取る素頓狂なシャウトが入ったカントリーが延々流れるので気が狂いそうになります。こんな脳のゆるみきった映画を撮っても映画史に名を残す事は可能なんですねえ…。人のやらない事をやる、というのは凄い事ですよ。


(2000年08月05日)
マニアック2000
Tow Thousand Maniacs!
1964年 アメリカ
監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス
出演:コニー・メイソン トーマス・ウッド