12人の優しい日本人

ええっと実に12年ぶりの鑑賞。『12人の優しい日本人』。最初に観たのは1991年の湯布院映画祭にて。個人的にこの時期に作られた邦画にはどうしても大なり小なりバブル期のイタい匂いを感じてしまうわけで、作品の良し悪しとはまた別な地平にてメラメラっと憎悪の炎がほむら立つのを押さえきれなかったりするんですが、それを差し引いてもこの映画はやっぱり傑作でした。日本における架空の陪審員制度を舞台に、ひとつの殺人事件の審理に集った老若男女12名の日本人が、被告の無罪有罪を巡ってカンカンガクガク二転三転のディベート合戦を繰り広げるのであった…というわけで言うまでもなくアメリカ映画の傑作『12人の怒れる男』のパロディなわけです。笑いと言うオブラートに包まれていて見過ごしそうになりますが、パロディとは言いつつも決してオリジナルの劣化コピーではなく、むしろそれに比肩しうるサスペンスフルな内容。しかも随所にまぶされた笑いは時代性を超えた普遍性のあるもので、ゲラゲラ笑いつつも12人のうちに日本人の社会の縮図が垣間見えて来たりするあたりが大変秀逸です。


オリジナルの『12人の怒れる男』がそうであったように、様々な紆余曲折、議論を経て全員が一つの結論にたどりつくというラストは、言いようのない後味の良さ、さわやかさに包まれます。何か河原で番長同士が殴り合ったあとに芽生える友情みたいなスガスガしさ。


しかししみじみと思うことには…出てくる大人たちが本当に自信に満ちあふれているのですよ。ディベートを牽引する役の人たちはもちろんですが、議論の末席でおどおどと意見を言う人たちさえ、他人の言葉に左右されない何か揺るぎないものを備えていることが観ていて判ります。これはバブル崩壊以後の、何を言うにもオドオドと自信と根拠が欠落した大人たちの描写とは正反対の描写です。いかにここ10年で大人たちが自信を失ったか…。まあそうは思いながらも、ゲラゲラ笑えてハラハラして、最後はどうにもサワヤカな気持ちになれてしまうという大の字つきの傑作。必見です。


(2004年02月02日)
12人の優しい日本人
1991年 日本
監督:中原俊
出演:塩見三省 上田耕一 梶原善 村松克己 豊川悦司