●解説 |
70年代変身ブームの勢いは凄まじく、1973年初頭には実に週十六本もの特撮番組が放映されていたが、1974年、春の改変期には半分以下の七本にまで減っていた。しかもそのうち3本は5分のミニ番組であり、30分番組は『仮面ライダーX』『ウルトラマンレオ』『電人ザボーガー』、そして『電撃!!ストラダ5』しかなかった。
さて、川内康範原作『ダイヤモンド・アイ』の後番組としてスタートした『電撃!!ストラダ5』は前番組の製作協力をしていた萬年社に加え、日活株式会社が製作にあたった。日活が特撮番組を手がけたのは後にも先にも本シリーズのみだ。脚本は山浦弘靖氏、高久進氏といった他の特撮番組でもおなじみのライターが手がけていたが、監督はすべて日活の監督。当然のことながらほとんどの監督は日活ロマンポルノを担当していた。それだけにゲスト女優は言うに及ばずレギュラーの山科ゆり氏も当時すでに多くの作品に出演していたポルノ女優である。この辺も他の会社の子供番組では考えられなかったことだ。また、宍戸錠氏、地井武男氏といった映画俳優が出演しているのも映画会社の日活が製作していた故のキャスティングと思われる。
レギュラー出演者には他に、『仮面ライダーアマゾン』で主演する直前の岡崎徹氏、『飛び出せ!青春』のイメージが濃かった剛達人氏、そして前年に『ワイルド7』で主役を演じた小野進也氏がいる。高視聴率だった『ワイルド7』は萬年社と国際放映の製作であり、本シリーズにも少なからず影響を与えていた。人数を7人から5人に、乗り物をオートバイから自動車に変更している他は基本設定はそれほど変わっておらず、どちらも変身しない集団のヒーローたちと怪人のいない人間だけの組織との、比較的リアルな戦いを描いている。ただ、特殊スーツへの着替えを変身風にしてみたり、ヒロインをテレパシー能力の持ち主にするなど、本シリーズではやや変身ヒーロー寄りとなっていた。
本シリーズは全十三本で終了したが、もともと1クールの予定で、放映開始時にはすでに撮影が終わっていたようだ。第一話から流れていたオープニングの映像には最終回のカットも使用されている。したがって低視聴率による打ち切りではなかったが、人気はそれほど高くはなかったようだ。
●キャラクター |
■堀田貫介/ペガサス(岡崎徹)・・・・・・国際警察の秘密部隊・ストラダ5の一員で射撃の名手。表向きはカーレーサーとしての顔を持つ。刑事だった父親をビッグノヴァに殺害され、その復讐に燃えている。疑り深いところがあり、アンドロメダのテレパシーも信じない。
■宝木正/ルナ(小野進也)・・・・・・ストラダ5のメカニック担当。普段もその腕を活かして自動車整備工をしている。爆弾の処理、暗号の解読といった専門的な作業もお手のものだ。常に冷静で客観的に物事を考えるが、時として熱くなることもある。
■殿村幻次郎/オリオン(地井武男)・・・・・・ストラダ5の副司令官的存在であり、ジュピターが不在の時は代わって指揮をとる。かつては刑事としてペガサスの父とコンビを組んでいたが、現在は病院に勤務。化学の知識も深く、変装の名人でもある。
■星カオリ/アンドロメダ(山科ゆり)・・・・・・ストラダ5の紅一点。生まれながらにテレパシー能力を持ち、未来を予知することができる。普段はファッションモデル。隊員服は当初ノースリーブだったが、第8話から長袖になった。OPでは「アンドロメガ」と表記されている。
■竹中一念/アポロ(剛達人)・・・・・・ストラダ5の一員で、怪力が自慢のユーモラスな男。普段は寺の坊主をしており、ストラダ5として敵と戦う時も特殊な数珠を武器にしている。また、彼の推理力は抜群なのだが、後期にはほとんど活かされなかった。
■高村輝次郎/ジュピター(宍戸錠)・・・・・・ストラダ5の司令官。隊員たちからはチーフと呼ばれている。本部から指令が入った時、アンドロメダが事件を予知した時などに通信機でメンバーを招集。時には自ら現場に赴くこともある。第7話のみ登場していない。
■ミスターアスモディ(早川五郎/声 飯塚昭三)・・・・・・世界征服を企むビッグノヴァの首領。こんな顔の人ではなく、設定上もマスクであり、マスクの下の顔は謎に包まれている。部下の失敗は絶対に許さず、ヘリコプターに乗って自ら幹部の抹殺に現れたこともあった。マスクをつけたまま葉巻を吸う。
●全話ストーリー |
第1話 地獄部隊をやっつけろ!
東京で国際警察機構の幹部だけを狙う連続殺人事件が相次いだ。二人の刑事が犯人一味を一時追い詰めたものの、ベテランの堀田は敢えなく殉職。そのため彼の息子・貫介は父親を見殺しにした若き刑事・殿村に憎しみを覚える。連続殺人事件はミスターアスモディ率いる国際犯罪シンジケート「ビッグノヴァ」の仕業と判明し、国際警察はこれと対決すべく特殊部隊「ストラダ5」を結成。司令官ジュピターのもとに集結した5人の中には貫介=ペガサス、殿村=オリオンの姿もあった。彼らはアンドロメダの予知に従ってガリレイ大使の警護にあたるが、大使は一味に誘拐され、その後を追ったペガサスも捕えられてしまう。残った四人は敵の基地をつきとめながらも大使を人質にとられては手も足も出なかった。だが、そこへペガサスが駆けつけ、仲間の窮地を救った。彼は死んだふりをして一味の手から脱がれていたのだ。
ストラダ5の初出動を描いた第一話。父親が殉職した時に一緒にいたというだけでオリオンをペガサスが恨むというのは逆恨みもいいところという気もしないではないが、これをきっかけとしたふたりの確執は次回以降も尾を引くことになる。また、本シリーズの売りのひとつである四台のマシーンも初回から大活躍。草原でのカーチェイスと爆発はかなりの迫力で、危険な撮影だったことがうかがえる。監督の沢井幸弘(澤井幸弘)氏はこの第一話のみだが、前年(73年)にはオリオン役・地井武男氏とアンドロメダ役・山科ゆり氏が共演した『濡れた荒野を走れ』(日活)を手がけていた。日本ヘラルド映画配給の『月光仮面』(81年)も氏の作品である。
第2話 恐怖の爆弾自動車!
アンドロメダがタンクローリーの爆破を予知した。その予知をもとに捜査を始めたストラダ5は狙われている車両が原子エネルギー研究所所有のものであることをつきとめる。研究所では核燃料の廃棄物をカムフラージュしてタンクローリーで運んでいたのだ。もしこれが爆破されれば東京中に死の灰を降らせることになる。しかも仕掛けられた爆弾は時速三十キロに減速した時点で爆発するというものだった。ペガサスとオリオンは走るタンクローリーにとび乗り、運転手を脱出させて爆弾の撤去を試みるが、取り外すことは不可能。信管をはずすにはルナの技術が必要だ。だが、ベガサスたちとの合流を急ぐルナの前にも敵の魔の手がのびる。万一のことを考え、岬へと車を走らせるオリオン。襲いくるビッグノヴァ一味を倒して車を守るアポロとアンドロメダ。やがてルナが到着し、間一髪のところで爆弾の処理に成功するのだった。
『スピード』の元ネタと言われる『新幹線大爆破』よりもさらに一年早く、一定の速度にまで落ちると爆発する爆弾というアイディアを取り入れた作品。しかも本作の場合は自動車が核廃棄物を載せているため、もし爆発すれば乗員どころか東京中が危険にさらされるというスケールの大きな展開である。この一大事に対してストラダ5は各人の持てる能力をそれぞれ発揮し、5人の見事なチームワークを見せている。また、今回の作戦を指揮した女幹部・東京ナンバー2を演じたのは『プレイガール』にレギュラー出演していた高毬子氏。次回以降も幹部の名前は東京ナンバーで呼ばれているが、第一話の女幹部は東京ナンバー1とは呼ばれていなかった。
第3話 秘密兵器イメージビジョン
世界主要国の犯罪捜査機関の代表が日本に集まり、ビッグノヴァに関する秘密対策会議を開くことになった。会議の開催にあたって各国が収集したビッグノヴァの情報はひとつの磁気テープに収められ、日本の捜査機関が保管していた。ビッグノヴァの一グループ・ブラックココナッツはその磁気テープを奪って対策会議を妨害するべく、ふたりの代表を誘拐して人質にとる。一味はさらに三人目の代表を拉致。だが、それはオリオンの変装した姿であった。次に誰が誘拐されるか、アンドロメダが予知したのだ。わざと敵に捕まったオリオンはアジトに捕えられていたふたりの代表を救出しようとするが、一味に正体を知られて窮地に陥る。一方、ルナはアンドロメダの予知を映像化するイメージビジョンを開発。これによってオリオンの居場所をつきとめた彼らはただちに急行し、オリオンとふたりの代表を助け出した。
アンドロメダの予知能力はストラダ5にとってなくてはならないものだが、新発明のイメージビジョンによってより強力な戦力となった。また、今回は得意の変装で敵のアジトに単独潜入するオリオンの活躍も見所の一つだ。ストラダ5とビッグノヴァとの攻防は特撮ヒーローものというよりもヤクザ映画のそれに近い雰囲気だが、それもそのはず、第二、三話の監督は渡哲也主演の無頼シリーズなどで有名な小沢啓一氏。第一話の沢田幸弘氏、『ワイルド7』の長谷部安春氏と共に日活ニュー・アクションの旗手とされていた監督である。なお、小沢監督は近年でも哀川翔主演の人気Vシネマ『修羅がゆく』『修羅のみち』両シリーズの約半数を手がけている。
第4話 替玉野郎を地獄へ送れ!
武器を製造する極東重工業の重村社長がクルーザーで釣りに出かけたまま行方不明となった。社長の一人娘・タエコの依頼によりストラダ5は捜索を開始するが、まもなく彼は何事もなかったかのように無事発見される。だが、屋敷に戻った重村の様子は以前と変わっていた。かわいがっていた愛犬に吠えたてられた上、その犬を殺してしまったのだ。その行動を不審に思ったジュピターは、ビッグノヴァが極東重工業をのっとるべく重村を誘拐し、そっくりの替玉にすりかえていたことに気づく。重役会議に集まった重役たちの抹殺を計る重村。ストラダ5はレントゲン写真との照合で彼が替玉であることの確証をつかむと、アンドロメダのテレパシーによって本物の重村の監禁場所をさぐりあてた。そして廃墟に捕われていた重村を救出。モーターボートで海上へ逃げた幹部を追跡し、追いつめるのだった。
ビッグノヴァが社長の替玉を使って企業の乗っ取りを画策するという都会的イメージのストーリーでありながら話の舞台は奥伊豆であり、モーターボートを使用した海上アクションが見せ場となっている作品。沼津ロケが行われ、スルガマリーナとタイアップしている。ストラダ5の面々がアクションシーンでまったくヘルメットを被っていないのが少し気になるが、アクションをするとヘルメット前部の突起物が顔に当たって痛かったらしく、出演者はヘルメットを被るのを嫌がっていたそうだ。監督の小原宏裕氏は『桃尻娘』シリーズ、『後ろから前から』などのピンク映画で知られるが、2004年に死去。社長の娘を演じた小川節子氏もやはりポルノ女優である。
第5話 暗殺コンピューターをぶちこわせ!
城南医科大学の若き医師・ホンドウがビッグノヴァに誘拐された。一味の狙いは頭脳コントロール装置にあり、彼を拷問にかけてそのありかを聞き出そうとする。頭脳コントロール装置とは、それを脳の内側に埋め込むことによってコンピューターの命令通りに動き、普通の人間の何倍ものエネルギーを発揮させることのできる装置だ。ホンドウの弟のシンジがその開発者であることを知った一味はシンジを拉致。アジトに捕えられた彼は兄を助けたいばかりに装置の秘密を明かした。しかし、ビッグノヴァの幹部はホンドウ兄弟に手術を施し、ふたりに装置を埋め込んでしまう。コンピューターに操られるまま冷酷な暗殺者と化した兄弟は、事件をさぐっていたストラダ5に襲いかかる。ペガサスは敵のアジトに潜入してコンピューターを爆破。兄弟は意識をとり戻すが、ふたりの身体には爆破装置が仕掛けられていた。
ストラダ5のメンバーに冒頭でいきなり集合がかけられたかと思うと、ジャピターから「携帯用イメージビジョン」なるものが5人に配られる。それは第三話で開発されたメインのイメージビジョンを通じてアンドロメダの予知した映像が送信されるという代物。ただ、携帯用と言いながら装置はトランク状となっており、持ち運びは不便そう。しかも今回のストーリーの中ではまったく役に立っていなかったりする。ところで、今回の敵幹部・東京ナンバー5を演じたのは、『スペクトルマン』で怪獣ノーマンを作りだす博士役を演じていた有馬昌彦氏。つくづく脳手術に縁のある役者さんだ。ちなみにノーマン編の監督・樋口弘美氏は本シリーズのプロデューサーでもある。
第6話 ハネムーン作戦でぶちあたれ!
科学省の生化学研究所で開発された新型特殊ガスSSGは人間の身体を一瞬のうちに骨と化してしまう恐るべき威力を持っていた。研究所の助手の村木は完成したばかりのSSGを持って逃走。ビッグノヴァに高値で売りつけようとするが、取引の場に現れた女幹部にたちまち殺されてしまう。ハネムーン中の新婚カップルを装ってその様子をうかがっていたペガサスとアンドロメダは隙をついてSSGを奪還した。だが、女幹部たちの追跡から逃れたものの自動車は故障し、ふたりは二本の足で逃走するしかなかった。敵に撃たれた傷のため、歩くこともできなくなるペガサス。彼は薄れいく意識の中でアンドロメダひとりを先に行かせるが、アンドロメダはペガサスの身を案じて戻ってきてしまう。ついに一味に追いつめられ、ふたりが窮地に陥ったその時、オリオン、ルナ、アポロの三人がマシンに乗って駆けつけた。
幾度となく事件を事前に察知してきたアンドロメダの予知能力をいまだに「信用できない」などと言うペガサス。何かと反発しあってきた犬猿の仲のふたりが嫌々ながら新婚カップルのふりをし(結婚式まで挙げる必要はないと思うが)任務を遂行していくのだが、けがをして動けなくなったペガサスはアンドロメダに任務を託そうとした。一度その場を離れながらもペガサスのことを心配して戻ってきたアンドロメダが「貫介」と、彼のことを初めて本名で呼ぶあたりに彼女の感情が込められている。監督は『ハレンチ学園タックルキスの巻』で監督デビューした林功氏。主に日活ロマンポルノを手がけたが、その中には『透明人間犯せ!』という珍作もある。
第7話 呪いのダイヤを撃て!
ビッグノヴァはひそかに精巧な人造ダイヤを作りあげ、秘密のルートで次々と東京に運び込んでいた。本物のダイヤとして売買し活動資金を貯え、日本の経済を混乱させる作戦だ。これに気づいたジャーナリストのゴードン村上は事件の解明に乗り出すが、ビッグノヴァの手先となった友人・譲次の手によって爆死。一緒にいた村上の秘書の理絵子は一命をとりとめたものの記憶を失っていた。譲次は目撃者である理絵子の殺害を命じられるが、彼女だけは殺すことができない。彼は理絵子の兄だったのだ。譲次は手榴弾で自爆すると、死に際にすべてを話した。国際線のパイロットである彼が命令通りに動くようになる薬を一味に打たれ、人造ダイヤを密輸させられていたことを。記憶をとり戻した理絵子の前で息をひきとる譲次。彼から密輸ルートを聞いたルナは人造ダイヤを奪い、組織の陰謀を阻止するのだった。
『愛の戦士レインボーマン』で堀田先輩を演じていた黒木進(現在は小野武彦)氏がゲスト出演。薬によってビッグノヴァの手先となりながらも妹を守るために自爆する悲劇の男・譲次役を好演している。ところで、今回は宍戸錠氏演ずるジュピターが登場しておらず、地井武男氏演ずるオリオンがチーフの代理的役割を果たしていた。しかもオープニングクレジットの順番まで本来は「宍戸錠」と出ていた箇所に「地井武男」の文字が。ただし話としては小野進也氏演ずるルナが主役格。クライマックスではレッドフォックスにリエコを乗せ、死んだジョウジの願いを果たすべく敵のもとへとびこんでいく。他の回ではあまり見られなかったルナの熱い男としての姿が魅力だ。
第8話 札束に手を出すな!
ビッグノヴァは名細工師として名高い男と若い印刷工を誘拐。さらに紙幣用の印刷用紙を奪った。大量のにせ札を作ってそれをばらまき、日本の経済を撹乱させようというのだ。ふたりの技師が完成させたにせ札は日本の警察や銀行にも見破れないほど精巧な出来栄えとなり、やがて日本の経済の中ににせ札が浸透し始めた。技師の誘拐と印刷用紙の強奪事件からビッグノヴァの作戦に気づいたストラダ5のオリオンはインクを溶かす化合液を作り、にせ札を見破る。本物の紙幣は化合液をかけても溶けない特殊なインクが使用されていたのだ。アンドロメダのテレパシーによって一味のアジトをさぐりあてたストラダ5は変装してアジトへの潜入を試みるが、合言葉を知らなかったために失敗。正体を明らかにして戦いを開始した。そして捕えられていたふたりの技師を救い出したストラダ5は、ビッグノヴァの作戦を打ち破るのだった。
本シリーズの中でも特にコメディ色の強い作品で、コメディ役者として名高い大泉滉氏のキャラクターによる部分が大きい。大泉氏演じる細工師を見て「あれで細工の名人とはねぇ。知らねぇ人が見たらバカだと思うぜ」と言うアボロに、「知ってる人が見たってバカに見えるわよ」と言うアンドロメダ。こんな軽妙な台詞の飛び交う脚本を手がけた藤浦敦氏は監督の遠藤三郎氏同様、日活ロマンポルノの監督や脚本を多く手がけていたが、三遊亭宗家の後継者でもあり、監督デビュー作も立川談誌氏や三遊亭円楽氏の出演する『喜劇いじわる大障害』だった。また、悪役として有名な丹古母鬼馬二氏は印刷工役を演じ、大泉氏と一緒になってとぼけた演技を披露している。
第9話 友よ 美しく死ね!
高校時代の友人に呼び出されたオリオンは「今すぐストラダ5を脱退しろ」という意外な忠告を受けた。彼は今やビッグノヴァの一員であり、ある重要人物の誘拐を命じられているという。オリオンは嫌でもその友人を撃ち殺すしかなかった。一方、宇宙パイロットのジョージ宮本は幼なじみのカオリ=アンドロメダを誘ってデートを楽しんでいたが、途中でビッグノヴァの一味に連れ去られてしまう。オリオンの友人が口にした重要人物は彼に違いなかった。実はジョージは宇宙細菌に冒されて後三ヶ月しか生きられない身であり、残りわずかな人生を楽しむため大金欲しさに自分の身体を一味に売り渡していた。ビッグノヴァはその細菌の濃縮液を作り出し、大量生産した病原菌を日本全土にばら撒こうとしているのだ。カオリがビッグノヴァと戦っていることを知ったジョージはダイナマイトを手にとり、アジトもろとも自爆する。
監督が同じでありがら前回とは打って変わってハードな作品。サブタイトルからしてめちゃくちゃハードである。友人を殺さざるを得ないオリオン、そして愛するカオリ=アンドロメダのために壮絶な死を遂げるジョージの姿が印象的だ。そのジョージを演じた岡崎二朗氏は東映や日活でアクション映画を中心に活躍していたが、特撮ファンにとっては何と言っても『快傑ズバット』の飛鳥五郎役が有名だろう。第一話しか登場していないにもかかわらず、飛鳥五郎の名は毎回ズバットに呼ばれていた。また、脚本の武末勝氏は小川英氏と共に手がけた東宝映画『呪いの館血を吸う眼』や『血を吸う薔薇』などで知られる。テレビ特撮では『流星人間ゾーン』を4本担当している。
第10話 爆弾魔に罠をはれ!
アンドロメダは高層ビルが爆破されることを予知した。だが、どのビルが狙われているのか、そこまではわからない。そんな時、ひとりの少年が公園で不審な信号音の入ったテープをひろった。そのテープはストラダ5のルナの手によって分析され、ビッグノヴァのビル爆破指令が暗号として吹き込まれていたことが判明する。しかし、彼らが暗号に指示されていたビルの前へ駆けつけた時にはすでに爆破は実行されていた。しかもビッグノヴァの真の狙いはビルの爆破によって警察の目をそらし、その隙に銀行を片っ端から襲って数十億の金を奪うことにあったのだ。次の狙いが日本銀行であることを知ったストラダ5はテープににせの信号を吹き込み、一味を自動車のポンコツ置き場へ誘い出した。怒った敵幹部はテープをひろった少年を狙い始める。アポロは少年を守って戦い、激闘の末に一味を倒すのだった。
北島マヤと言えば『ガラスの仮面』の主人公の名だが、ゲスト出演の北島マヤ氏はもちろん実在の女優。大映映画『怪談累が渕』などに出演しており、今回は血も涙もないクールな爆弾魔を演じている。その爆弾魔が狙うのは高層ビル。爆破は実行に移され、ビルの破壊シーンも見られる。本シリーズ中では珍しい大掛かりな特撮シーンだ。ところで、今回は驚くほどペガサスの影が薄く、台詞も少ない。他の四人がそれぞれ活躍の場を設けられていただけになおさらである。ストラダアップするのはオリオンとアポロのふたりだけで、それぞれひとりだけで敵の一味と戦うという展開になっていた。ラストシーンで少年に見送られていたのは四人のようだったが…。
第11話 死を呼ぶテレパシー!
護送車がビッグノヴァに襲われ、犯罪者のひとりが連れ去られた。彼らの狙いは犯罪のプロを集め、インターポール日本支部で開発されつつある犯罪分析機を破壊することにあった。犯罪分析機は極めてわずかな手がかりから犯人を割り出すことのできる装置であり、ビッグノヴァにとっては邪魔なものでしかなかったのだ。だが、アンドロメダのテレパシーはなぜか事前にそれを予知することができなかった。そんな時、オリオンに高校時代の後輩・今井知子が近づいてくる。彼女こそがビッグノヴァの女幹部であり、アンドロメダのテレパシーを妨害していた張本人でもあった。そこでアンドロメダはルナの作ったテレパシー撹乱機を使って逆に和子のテレパシーを撹乱。犯罪分析機を積んだ試験車そっくりの、にせの試験車に彼女をおびき寄せる。オリオンは和子に人生をやり直して欲しかったが、それを許すアスモディではなかった。
本編中、和子がビッグノヴァに加入した理由というのが和子自身の口から語られている。彼女は高校時代、当時大学生だった殿村=オリオンにクリスマスプレゼントを贈った。そのプレゼントが花瓶というのもどうかと思うが、よりによって殿村は彼女の見ている目の前で別の女性にそれを見せ、手をすべらせて割ってしまったのだ。その女性が殿村の妹だと知るよしもなかった和子は心に深い傷を受け、悪の道に走ってしまったらしい。ところで、幹部はアスモディの仕掛けた罠によって殺されるというのが毎回のパターンだが、和子はなんと地割れに呑み込まれるという最期を遂げている。なんとも波乱万丈の人生だ。演じる梢ひとみ氏は日活ロマンポルノで活躍した。
第12話 殺人マシンを狙撃せよ!
ジョン・F・ケネディを暗殺した狙撃銃を手に入れたミスターアスモディは、アルメニア共和国のペリー長官暗殺を予告した。だが、護衛にあたるべく迎賓館に向かったペガサスの目の前で長官は狙撃され、暗殺者にも逃げられてしまう。暗殺者を目撃したのは盲目の女だけだ。ジュピターはアンドロメダのテレパシーを使って女の記憶から暗殺者の顔を割り出し、それがイーグルと呼ばれる狙撃者であることをつきとめた。次に狙われるのはアルメニアのアーサー大頭領に違いない。ストラダ5が護衛していたにもかかわらず大頭領は暗殺されたかに見えたが、それは防弾チョッキを身につけたオリオンの変装であった。ヘリコプターに乗りもうとしていた本物の大頭領を狙うイーグル。だが、イーグルはただの囮であり、本当の暗殺者は盲目のふりをしていた女の方だった。それに気づいたペガサスは暗殺を阻止し、女を追いつめる。
第8話は『レインボーマン』の第二部(M作戦編)を思わせるものだったが、今回は第三部(モグラート編)を彷彿とさせる。アルメニアは石油産出国で、大頭領が暗殺されたら日本への石油の輸出が止まり、日本経済が麻痺するというのだ。アルメニアの長官を演じたO・ユセフ氏も『レインボーマン』第三部で死ね死ね団に狙われる要人を演じていた。ところで、ここに出てくるアルメニア共和国は、実在する同名の国とは別の架空の国と考えた方がよさそうだ。国旗も違うし、実在のアルメニアは石油産出国ではない。なお、狙撃者イーグルを演じたのは、やはり『レインボーマン』等でおなじみの大月ウルフ氏。監督の白井伸明氏は、やはり日活ロマンポルノで有名。
第13話 ミスターアスモディの仮面をはげ!
原爆の千倍もの威力を持つ核兵器を作ることのできる物質・ベーター72を奪うべく、ビッグノヴァの一団が東洋原子力研究所襲った。だが、そこに待ち構えていたのは、アンドロメダのテレパシーによってそれを事前に知ったストラダ5だった。一団を倒した後、オリオンとルナはベーター72を本部へと運ぶが、ビッグノヴァの奇襲を受けて奪われてしまう。そんな時、アンドロメダは海と岬、そして洞窟が見える景色をテレパシーで感じ取った。そこがミスターアスモディのアジトであることを察知したペガサスはひとりで潜入を試みる。間一髪のところでアジトの爆発から逃れ、ひたすらアスモディの後を追うペガサス。そしてダムの水門に追いつめた時、アスモディはダムに仕掛けた時限爆弾を指差した。拳銃の弾丸はあと一発。ペガサスは目の前のアスモディを逃しながらも時限装置を撃ってダムの爆発から人々を守るのだった。
父親の仇であるアスモディに対するペガサスの個人的感情。そして父親から託された形見の拳銃。第一話以来忘れ去られたかに見えたこれらの設定が最終話にして復活。ストーリーは飽くまでもペガサスが中心であり、第一話を担当した山浦弘靖氏ならではの脚本となっている。どこまでも執拗にアスモディを追うペガサスの姿を描きながら、最終的にはアスモディの息の根を止めるか、ダムの爆発による被害から人々を救うか、二つに一つの選択をしなければならないという皮肉な展開。結局はアスモディを取り逃がしてしまうことになるのだが、個人的感情よりも平和を守ることを優先したペガサスを誰も責めらない。すっきりした結末ではないが、心に残るラストである。
●データ |
1974年4月5日〜1974年6月28日
日本テレビ系 毎週金曜午後7:30〜8:00放映
カラー 30分 全13本 萬年社、日活株式会社作品
[スタッフ]
プロデューサー/衛藤公彦(萬年社)、樋口弘美(日活) 原案/松本一 脚本/山浦弘靖、安藤豊弘、高久進、藤浦敦、武末勝 監督/沢田幸弘、小沢啓一、小原宏裕、林功、遠藤三郎、白井伸明 撮影/高村倉太郎、山崎敏郎 照明/川島晴雄、新川真、松下文雄 録音/長橋正直、紅谷愃一、秋野能伸 美術/土屋伊豆夫、林隆、渡辺平八郎、山本限一、川船国彦 編集/西村豊治 助監督/佐藤重直 色彩計測/関寿之、松川健次郎、米田実 技斗/渡辺高光(JFA) 音楽/愛企画センター 製作担当/高橋信宏、青木勝彦、古川石也、山本勉、服部紹男 製作連絡/斉藤博 高津映画装飾 第一衣裳 山田かつら店 東洋現像所 銃器協力/MGC、ボンドショップ 協力/筑波サーキット 衣裳協力/ハナムラ 製作/萬年社、日活株式会社
[キャスト]
堀田貫介(ペガサス)/岡崎徹 宝木正(ルナ)/小野進也 殿村幻次郎(オリオン)/地井武男 星カオリ(アンドロメダ)/山科ゆり 竹中一念(アポロ)/剛達人 ミスターアスモディ/早川五郎 ミスターアスモディの声/飯塚昭三 ナレーター/丸山詠二 高村輝次郎(ジュピター)/宍戸錠
[放映リスト]
放送日
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サブタイトル
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脚本
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監督
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ゲスト
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1
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74/4/5
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地獄部隊をやっつけろ! |
山浦弘靖
|
澤田幸弘
|
柴田英子、R・ジョンソン、伊豆見英輔、有川兼光、氷室政司、遠矢孝信、小松方正 |
2
|
4/12
|
恐怖の爆弾自動車! |
山浦弘靖
|
小沢啓一 | 高毬子、中平哲仟、溝田拳、露木護、橘田良江、山本広次、田尻陽一郎 |
3
|
4/19
|
秘密兵器イメージビジョン |
安藤豊弘
|
小沢啓一
|
北九州男、雪丘恵介、R・ジェッサー、A・ヤドム、有川兼光、稲葉大介、熊谷巖 |
4
|
4/26
|
替玉野郎を地獄へ送れ! |
高久 進
|
小原宏裕
|
小川節子、村上冬樹、杉山俊夫、安富公日男、大理敦穂、尾崎孝二 |
5
|
5/3
|
暗殺コンピューターをぶちこわせ! |
安藤豊弘
|
小原宏裕
|
山口哲也、有馬昌彦、木下清、小林亘、小山梓、小山渚、田尻陽一郎 |
6
|
5/10
|
ハネムーン作戦でぶちあたれ! |
山浦弘靖
|
林 功
|
二條朱実、小泉郁之助、長弘、神山勝、小見山玉樹、熊谷巖、稲葉大介 |
7
|
5/17
|
呪いのダイヤを撃て! |
高久 進
|
林 功
|
黒木進、梅野泰靖、和田恵利子、木村元、田畑善彦、山本広次、安富公日男 |
8
|
5/24
|
札束に手を出すな! |
藤浦 敦
|
遠藤三郎
|
大泉滉、三重街恒二、丹古母鬼馬二、清水国雄、金井千恵、白井鋭、浜口竜哉、露木護、横田楊子 |
9
|
5/31
|
友よ 美しく死ね! |
武末 勝
|
遠藤三郎
|
岡崎二朗、田中幸四郎、佐藤了一、久遠利三、氷室政司、北上忠行、深町真樹子 |
10
|
6/7
|
爆弾魔に罠をはれ! |
高久 進
|
遠藤三郎
|
北島マヤ、河野弘、松原和仁、有川兼光、大理教穂、庄司三郎 |
11
|
6/14
|
死を呼ぶテレパシー! |
武末 勝
|
遠藤三郎
|
梢ひとみ、井上博一、尾崎孝二、片桐道子、桂小かん、賀川修嗣、山岡正義 |
12
|
6/21
|
殺人マシンを狙撃せよ! |
高久 進
|
白井伸明
|
加藤真知子、大月ウルフ、O・ユスフ、J・ディビス、田尻陽一郎、山本広次、安富公日男 |
13
|
6/28
|
ミスターアスモディの仮面をはげ! |
山浦弘靖
|
白井伸明
|
トビー門口、木島一郎、トニー池添、大鷲勝道、有川兼光、稲葉大介、熊谷巖 |