■出発の朝

10月2日。晴れ。
この日は前夜(も徹夜)から引き続き旅行の準備に終われていた。基本的な部分の準備は終わっていたのだが(スーツケースは前日に成田に配送済。)、メインパソコンからノートパソコンへのデータのコピーに予想以上に手間取り、全ての準備が完了したのは午前4時すぎの事であった。そしてこの日はセルタ×ミランの試合の中継があったため、そのまま起きて試合を見る。前日の昼間は新宿や秋葉原を飛び回っていたので疲れていたが、試合は見たい。というわけでいきなり2連徹の強行スケジュールである。しかし当の試合はかなりタルい内容で半分眠りそうになりながらの観戦となった。結局スコアレスドローに終わる。この試合、実は当初現地に見に行く計画もあったのだが、行かなくて本当に良かったよ・・・(ヴィーゴは遠いしな・・・)。

あまりにもパッとしない試合内容に、ここ48時間の疲れも加わって、どんよりした気分で家を出る。母親と犬に駅まで見送られた。そう言えば自分にとってこれが初めての海外旅行なのだった・・・すっかり忘れてたけど・・・。

新宿にて事前に切符を買っておいた成田エクスプレスに乗り、同行のN氏と合流。N氏とはW杯がキッカケになった出会いから1年。知り合った当時はお互い普通の社会人であり、よもや一緒に会社を辞めてイタリアへ、しかも70日も行く事になるとはついぞ考えもしなかった・・・。成田では分厚い航空券のを受け取り、N氏のご両親に見送りを受け、両替や諸々の出国手続きを経て飛行機へと乗り込んだ。

■アリタリアの旅

乗ったのはアリタリア航空787便。12:30発。東京からミラノへの直通便は1日1本。これしか無い。遅れることで有名なアリタリアだが、ほぼ定刻に出発したように記憶している。

2徹明けで出発していたため、私は当初からこのアリタリア機内では爆睡を決め込んでいた。だからあまり記憶がない。とにかく寝て食ってゲーム、食って寝てゲーム。そう、AZ787便はボーイング777というボーイング社の新型機であり、装備が豪華。エコノミーでも備え付けのプライベートモニタでゲームなんかが出来ちゃうのだ!映画も見られる。そして私はポケモンパズル(GBC版)にハマっていきなり腱鞘炎寸前に。(あれはパズルゲームというよりマジドロに近いアクションゲームだな〜。)そして気が付いたらイタリアに着いていた・・・という具合だ。体感的には3、4時間くらいか・・・。近い、近いぞヨーロッパ!(※実際は12時間ほどかかっている。

しかしかなり爆睡していた時にも食事の時間にだけは何故かしっかり起きて、機内食は全て完食。まずいまずいと言われる機内食も自分的には美味しく頂けた。この先どこでも生きていけそうな予感がした。

■起きていた時間に撮った数少ない写真はコチラ↓


場所は中国上空くらいか?

うねる川の水に光が反射して、幻想的な光景だった。

雲なのか氷原なのか・・・

多分氷原。だと思う。

アリタリアは飛ぶよどこまでも。

イタリア付近。

■ミラノ到着

さて、ミラノに着くと空港から宿まではバスとタクシーの乗り継ぎを選択。ブルジョアジーであれば、タクシーで一直線でしょうが、勿論そんな余裕は無く・・・。イタリアはタクシーの運賃は日本とさほど変わらないが、バスは格段に安いのだ。マルペンサ空港からミラノ中央駅までのバスは所要時間50分で4.5ユーロだ。成田から東京までのリムジンバスが1時間20分/3000円するのに比べると、如何に安いかが実感できる。

にしても風景や道路の作りが日本の成田周辺とほとんど変わらない・・・。おかげであまりイタリアに来ているという実感がわかないまま、夜8時ごろ、ミラノ中央駅に到着。ここは何やら雰囲気がヤバい。薄暗く、夜の上野公園の裏手もしくは新大久保のホテル街並みに国籍不明の胡散臭い連中が屯っている。こういうところは一刻も早く脱出するに限る!と自分の警戒本能が告げている。タクシー乗り場でタクシーを待つ間にも、方々から探るような視線を感じる。通常ならなんて事は無いのだが、荷物が多く、身動きが取りづらいこの状況ではやはり怖い。そういう時に限ってなかなか来ないタクシー・・・。自分たちがいくら焦ってもしょうがないのだが、焦る。約10分後、やっと来たタクシーの運転手に住所を告げると、宿までは5分ほどで到着した。

中央駅からさほど遠くないその宿の名は「モレッティサンハウス」。日本の旅行代理店を通じて手配した、キッチン付きのアパートメントである。70日に及ぶ旅で、スーツケースの持ち歩きは極力避けたかったため、ポルトガル行きの日程を除いた約60泊分、この宿を予約していた。ちなみに私は勝手に「モレちゃんち」と命名してこの名で呼んでいたので、以降、文中でもこの名を使わせて頂くことにする。

だがそんな名前に反して(って勝手に付けたんだが)、モレちゃんちは素晴らしかった・・・。案内された部屋はベッドルーム(12畳くらいにセミダブルのベッド×2と机とテレビ)とキッチン(7、8畳くらい。冷蔵庫とキッチン、テーブルがある。)に別れており、バスタブ付きのバスルーム(4畳くらい)も別に付いている。さらにはバルコニーまである。しかもどこもかしこもキレイで可愛いのだ!!惜しむらくは電話線が使えない事だが・・・それを差し引いてもこの宿は最高だ!と言い切れるほどの設備である。ホテルとしては二つ星に分類されるのだが・・・実はこれで中央駅近くのユースホテルに2人で泊まるよりも安かったりするのだな・・・。(見本市期間除く。)そして鍵を渡されるので門限もない。サッカー観戦はどうしても夜が遅くなるのでこれは好都合だ。個人的にはベッドがセミダブルサイズ(日本のダブルサイズくらいの大きさか)の大きさがあるのが大変気に入った。

■確率は50/50

一通り部屋の案内が終わると、オーナーのモレッティさんの部屋で、その他の規則などの説明を受ける。ホームパーティをしちゃいけない、とかね。いや、そんなのしないから〜。などと軽く質疑応答を繰り返すうちに、「旅の目的は?」と、至極「聞かれて当然」な事を聞かれる。そこでN氏と事前に申し合わせていたとおり「さ、さいとしーいんぐ・・・(観光)」と答えた。いや、嘘は言ってないしさ・・・。でもその答えにモレッティさんは納得しなかった。 「観光って言ったって、ミラノなんて1日あれば見て回れるよ!?」・・・はい、ごもっともです・・・そりゃーミラノに普通の観光だけで70日も滞在する奴はいないよな・・・。

しばしN氏と顔を見合わせる。気まずい空気が流れる前にN氏が切り出した「いや、私たち、サッカーが好きで・・・観戦に・・・」と。すると、モレッティさんがニコニコしながら「僕も大好きなんだよ〜!」と言いつつ、懐からパスケースを取り出した。

え!?な、な、何ごと!?っていうかあなた、どっちよ!?・・・ と、一瞬のうちに目と目で会話するN氏と私。ミラノ市民であれば、だいたい半々の確率でミラニスタかインテリスタであるという事は、想像していた。だから青い何かが出てきたらどうしよう!と、二人で身構えたのだった。

まさに緊張の一瞬であった。・・・しかし、パスケースから出てきたのは赤い、ミランのアッボナメント!(年間予約席の券)。それに昔のウルトラの会員証らしきモノまで・・・。

そんなわけで、そりゃもう張り切って「私たちもミランが好きで来たんです!」と真実を告白する事が出来た。勿論、モレちゃんも大喜びである。まぁ同席していたモレちゃんのマンマは若干冷ややかな視線で私たち3人を眺めていたが・・・。

こうして最高の宿と最高のオーナーのバックアップを手に入れ、イタリアでの旅が幸先良く始まった。

青じゃなくて良かったよ、本当・・・。


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