■ STRANGE, EXOTICA ROOTS |
■ 2008年7月10日(木) |
Folkways / nalyD NACD-3211 「フォークソングズ・アンド・インストゥルメンタルズ・ウィズ・ギター」 エリザベス・コットン |
"ストレンジ・ブルース"の極みといえそうなのが、いまから50年余り前にアメリカン・フォークの宝庫、フォークウェイズから発売されたこのエリザベス盤だ。黒人ブルース・ファンには長い間毛嫌いされてきた。ミシシッピ・ジョン・ハート盤もしかり。どうも黒人ブルース狂は、頭が堅い。ブルースにもこんなリラックスできる音楽が昔から存在してきたことを認めるわけにはいかなかったのだろう。 エリザベスはギター・バンジョー弾き語りの女性ブルース歌手。左手で奏でるギターがとても気持ち良い。バンジョー奏法を応用したトゥ・フィンガー・ピッキングから醸し出されるサウンドは、人肌に似た温もりが漂う。アルバムの聴きどころは、ピーター・ポール&マリーのカヴァーでお馴染みの「Freight Train / 貨物列車のブルース」。ハワイアンのスラック・キー奏法に似た演奏ぶりも緩くて魅力的。オープンEやオープンD・チューニングを駆使した録音なのだが、なかでも「Vastopl」は、ライ・クーダーも敬愛したギャビー・パヒヌイの感じ。とてもリラックスできる。 ボブ・ディランやジョン・フェイヒイも熱心なエリザベス・ファンだった。ディランは、日本公演で「Oh, Babe It Ain't No Lie」のカヴァーを披露してくれた。ジョンは自信のアルバム『Requia』の表紙でエリザベスのように左手ギターを弾く写真を掲載、彼女への愛情を示していた。日本盤は、限定紙ジャケット仕様。解説は、畏友の大江田信さん。米オリジナルの同封されていた解説の翻訳も付いています。 |
Flying Fish / EM Record EM1010CD 「ハニーサックル ローズ」 ザ・セントラル・パーク・シークス |
ニューヨーク・フォーク・シーンから誕生したブルーグラスは、南部発のそれと違ったお洒落さが売り物だった。ギター名手のジョン・ミラー、バンジョーの異才、トニー・トリシュカ、妖艶なマンドリン奏者、アンディ・スタットマンなどが在籍したカントリー・クッキングが良き例だ。ビートルズのカヴァー・アルバムを発表したボストン・フォーク・シーンの逸材、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ、ビル・キース&ジム・ルーニーも、一味違った小粋なブルーグラスを演奏していた。 セントラル・パーク・シークスは、エキゾティックなグラス・アルバム『Cowboy Calypso』を発表して世間を驚かせたニューヨーク・グラスの覇者、元カントリー・クッキングのギタリスト、ラス・バレンバーグ人脈のマット・グレイザー(フィドル)がリーダーを務めたご機嫌なバンドだ。ジャンゴ・ラインハルト&ステファン・グラッペリの"ジプシー・スウィング"と、ビル・モンロー、スタンリー・ブラザース、フラット&スクラッグズなどの"ブルーグラス"、ボブ・ウィルズ、ミルトン・ブラウンなどでお馴染みの"ウェスタン・スウィング"などをミクスチャー、優れた感性から醸し出されるアコースティック・スウィングがもう鳥肌もの! 爽やかスウィング・ジャズの極みは、冒頭曲「Shipwrecked Man」から。ジャズ・スタンダード「Stompin' At Savoy」、「Honeysuckle Rose」のカヴァーも、これぞ"アコースティック・スウィング"だ!ブックレットの解説は、ぼくが書いております。またノアルイズ・マーロン・タイツによる「アコースティック・スウィング対談」も興味深い。 |
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