これは南海の楽園に、失われた自然とロマンを求めた男の物語である。
その男、名は広川太一郎という。つまり、この僕らっち。
憧れて求めて着いたその島は、青い海、白い渚にヤシの葉しげる、南の楽園タヒチ島!
聞きしに勝るその素晴らしさ。魅力いっぱい精いっぱい、魅惑わくわく火鉢のどびん。
僕らっちは目ン玉もそわそわ、そわ誰ぞ。
あっちへうろうろ、うろう声。こっちへキョロキョロメダカの目。
下手な鉄砲も数うちゃ当たるってんで、
まひね(可愛い子)とみればボールを投げてかわされて、見逃しワイルドピッチ。
肩はがっくり膝まで落ちて、涙ボロボロ、古着屋さん。歩く姿や蜻蛉日記。
頭冷やそと海へ行って、ところがどっこいヒゴイにマゴイ、いました!
楽し子ちゃんのミリアちゃん。
ミリアちゃん。このうれし子ちゃん。
あくどく好みを感じて、僕はたちまち一目惚れ。
最後のボールをバシッと投げりゃ、手ごたえ十分、カァーン!と打たれてホームラン。
あたり、あたりめ、スルメの天ぷら。感謝、感激、雨あられ。
3月3日はひなあられ。2月15日は僕らっちの誕生日。
僕らっちはもう、浮き足、駆け足、勇み足。
毛穴も開いて潮吹いて、鳥肌、もち肌、勇み肌。
さてそれからというものは、ミリアミリアで夜も日もあけず、
恋のひな鳥、虜となって、タヒチは灼熱、恋の島。
タヒチは灼熱どころか、二百熱、三百熱から溶鉱炉。
さて、ワイディア・ミリアと初めてのディトは、パーペーテから飛行機で約1時間、
最後の楽園と言われるボラボラ島へのフライング・ディト。
どうだい、灯台、風呂屋の番台。
着いた珊瑚礁の飛行場から、さらに船で向かうわけだが、
僕らっちのミリアちゃんは、足取り軽くウラランラン。
髪いっぱいの花飾り、いそいそ大磯、磯の風、うく山脈ウレウレと。
僕はと言うとニヤニヤして、いやったらしいったら、ないったら、ない。
期待の胸は除夜の鐘、膨らむ心のシャボン玉、ふわりふわふわ波の上。どうだい、黒鯛、赤穂鯛。
ねえ〜。青い海面に白い航跡。空き缶なんぞは浮いていませんでしたよ。
これがボラボラ島の山。この姿、あたりは千金、おめいは十八人。
眺めるこの僕らっちは感慨無量の道路は有料。感極まって見回すと、ん!
これもフレンチ・マヒネ! いけるぞ、ヨッコリオ!
よいと待て。ミリアがいるのに大概こにしなさい、僕らっちの悪い癖なんだから。
爪を噛んでいるうちに、船が着きまして…むむ! ここにも椰子と太陽がある。
なあんて、当たり前の突き当たり。ここはタヒチだ、ヒタチじゃないよ。
そばにはミリアの熱い肌、心うきうき浮き袋、
恋は波間で平泳ぎ、恋は走るぞ大八車、ボラボラ島のひた走り。
これが僕らっち二人の愛の巣。風通しはいいし、蚊もいない。
あれ! ミリア、どこいくの?
え! お散歩。いや、お散歩って…ここへ来てまで……いいじゃないか、
お散歩なんていつでもできるんだから。
僕らやっと二人きりになれたんだから、ねえ、ミリア、こっちいらっしゃいよ。
僕はもうひどく燃えているし、君だってそんな風だよ、ミリア。
散歩なんてあとでいいから、ミリア。
ミリアったら、チョット待ちな、どうやって、ど、どうやってどうやって、
逃げちゃったりなんか、するの…あ! 腰布が!
風ってやつは悪いやつだけども、ほんと、ありがたい話だが――
え、あのね…かくれんぼとか、おにごっこなんか、やっている場合じゃない。
タヒチに来てまで、そんなことは僕はやりたく――
どうしてそうやって焦らすの。
どんどんどんどん、海ん中入ったりなんかして、僕はあまり泳げないんだから、
いじわるしないでミリア〜〜!
色がするどい、弾けるような健康美。
ミリアこっちおいで、こっちおいで。
どうしたの。え…海ん中へ潜る…?
よおし! この僕らっちだって、君のためなら、たとえ水ん中、水ん中だ!
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